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らんどくの秋、女子会編

2021年09月25日 | 読書
 女子はかくも強し。1950年代、60年代、70年代いずれの年代に生まれても、様々な境遇でありながら、ひたすらにしなり強い。


『とにかくうちに帰ります』(津村記久子 新潮文庫)

 去年の秋もこの作家の文庫を読んでいる。そこに「人間観察テンポについていけない」といったことを記していたが、今回も全開という感じの作品だった。ただ今回は遅れがちながら少し見えたようにも思う。標題作は、解説の西加奈子が「乱暴に説明すると(略)雨の中、みんなが家に帰る話。」と書いたが、非日常的な場における凡人の心理の振り幅を見事に描いている。「職場の作法」の4篇も微細な点を掘り起こしたり、またはスルーしたりする感覚が実に自然に入ってくる。これは「噓くささが微塵もない」表現の典型だ。




『その「1錠」が脳をダメにする』(宇多川久美子 SB新書)

 いわゆる生活習慣病で医者通いは十数年続けているし、サプリオタクという面もある。だから半分危機感を持ってこの類の本を手に取っていた。軽く一読後、やはりと思う。こうした知識はよく週刊誌などでも特集され、目にはしている。題を少し拾うと「『インフル予防接種』はギャンブルだ」「気軽な『市販薬』が、寝たきりを招く」「『サプリメント』も、石油でつくられる」…怖い。薬漬け、サプリ依存の自分の「脳はダメに」なってしまったのか。では何も考えられまい(笑)。いずれ、薬とは「毒」の面が必ずあると再認識すること。それが齢を重ねてどう向き合うかの判断基準だ。


『国境のない生き方』(ヤマザキマリ 小学館新書)

 最近なぜか目にする機会が多い気がする著者の名前。『テルマエ・ロマエ』の原作者(漫画家)だったか。それにしてもこの新書、前書きに「珍しい生き物の観察をするような感覚で読んでいただけたら」と記されている。そして、まさにそんな読後感を抱くような半生記だと感じた。「もらった命を謳歌したい」とも書く。14歳でヨーロッパに旅をして…しかし恵まれた環境とは正反対の日々で刻んだものはあまりに大きい。いや、それ以前の幼き頃からの暮らしで培われた本性こそが、彼女に表題のような生き方を宣言させるのだ。つまりは母の生き方そのもの。この偉大さを否定できる者はいない。