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らんどくの秋、スタート

2021年09月04日 | 読書
 「らんどく」は「乱読」なのだが、辞書ではもう一つ「濫読」という字が出てくる。どちらも「手当たり次第」の読書ということだ。「濫」は「度が過ぎる」意味合いもあるが、自分はそこまでではない。当て字にすれば「覧読」(広く見る読書)程度かな。いやいや「run読」(読み走る…?)で、読み続けているだけか。



『寒河江伝説』(半村 良 実業之日本社)

 1992年に単行本、96年にノベルズ版として発刊されている。2020年の日本が描かれている長編近未来小説」である。
 東京は大陸やアジアからの移民に溢れスラム街化している。上級国民たちは「東北自治区」で暮らし、人口流入を閉ざしているのだ。それは家畜が防衛変異に起こして「毒」と化したことがきっかけになっていた。
 小説としては文章表現にあまり興味がわかなかったが、設定自体は実に面白い。「東京」は感染の恐怖の中にある。「そんな死が待ち構える都市に東京はなりさがってしまった」。
 30年前の作家の想像は、半分当たった。


『ダーリンの進化論 わが家の仁義ある戦い』
 (高嶋ちさ子 小学館)


 知人に「面白いから」と薦められ渡された。朝4時台の寝床で久しぶりに一気読みしてしまった。
 著者のキャラクターはTVなどで見ているが、やや破天荒な発言の下地、背景が詰まっている一冊だ。母親に「障害のある姉を守るために産んだ」と言われて育ったという冒頭から惹き付けられた。
 この人や周囲の家族を概観すると「端的な生き方」という語が浮かぶ。バランスを重視する凡庸的な生き方がちっぽけに見えてくるのだ。
 母が語る「個性とは、つぶしてもつぶしても残るもの」という考えは、我が師の教育論の一つであった。個性とは甘っちょろくない。