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桜と絵本と豆乳と

敗戦した国にも花は咲いてるが…

2021年09月07日 | 読書
 「人間の業」を肯定するしないは、個人レベルの問題と、社会全体では大違いだなと、この二冊を読了し考えた。
 個人としての業は生き抜くに有効に働いても、私達の暮らす社会に巣食う「業」を簡単に肯定するのは、ある意味では罪になる。



『花は咲けども噺せども』(立川談慶  PHP文芸文庫)

 著者にはずいぶんと著作が多いようだが、初めて読んだ。本職の落語も聴いた記憶がない。
 知り合いのブログにお薦めとして載っており、興味が湧いて注文した。二つ目落語家を主人公としたハートフル小説とでも言おうか。
 立川流で修業を重ねた自分の過去を重ね合わせているようなストーリー。舞台が寄席以外のイベント会場、小児科病棟、老人ホーム、そして中学校などで、聴衆との交流を通して落語の素晴らしさを語り、また再認識していく
 やや定型的な流れもあるが、読んでいて心地よい物語だった。


『敗戦真相記』(永野 護 バジリコ株式会社)

 なんと昭和20年9月に広島で行われた講演記録がもとになった本である。
 2002年に発刊されたのだが、実は「予告されていた平成日本の没落」という副題が背表紙にある。解説を書いた田勢康弘(日経新聞社論説委員)が付けたと考えられる。
 終戦一か月後に講演で語られた内容に、田勢が書くように21世紀初頭の日本の没落の原因が見え、そしてまさしく現在の日本が重なる。いくつも挙げられるが「人材飢饉」「縄張り意識」がどんと心に残る。
 75年間変わらない、さらに酷くなっている…この国の現実を見事に突いている。
 (さらに明日書きたい)