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うそだあと12回言う

2021年10月16日 | 絵本
 サトシン作品は図書館にも数冊収められているが、その中でこれが一番しっくり来る。全編が二人の男児の会話で進み、片方の子が題名の「うそだあ!」で受けるパターン。最初から思わずクスッと笑える「うそ」が、徐々に膨れ上がって、最終のオチまでが実にテンポよく、リズミカルに運ぶ。読んで楽しい一冊だ。


『うそだあ!』(サトシン・作  山村浩二・絵) 
  文溪堂 2014.10




 「えっ ホント?」「うそでしょ!」「ええーーっ うっそー」と、相手の言ったことを直接的に否定する言い回しはたくさんある。その中で「うそだあ!」を選択したのは、作家の直感とセンスかもしれないが、音声表現上、工夫できる幅が広いと思う。だから、嘘の「度合い」によって、返しの表現も違ってくる。


 暖色系、淡色系の色使い、二人の男児のシンプルな形象と端的な感情描写が、ぴったりマッチしている。仮に、真逆の写実的な絵だったとすると、重くなってしまい、変なイメージがついてしまうように感じる。中味のオーバーな展開やコミカルさを生かすために、あえて抑え目にすることで全体がまとまるのだな…。


 読み手としては、自分はどちらかと言えばキャラクタータイプと心得ていて、これはレパートリーにしてもいいかな。改めて考えたのは、計12回の「うそだあ!」の読み方だ。一番の驚きはおそらく最後になるだろうが、そのために大声を使う方法もあるし、驚きのあまり…声を失う(程度の小ささ)という手もある。