すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

違いへのこだわりは捨てないよ

2021年10月03日 | 雑記帳
 中古本屋で110円の文庫版漫画を買った。『花のズボラ飯』という久住昌之(「孤独のグルメ」の人だね)原作なのだが、妙にレトロな駄洒落やあるある感が満載で和む話だ。主人公の花が偶然に大学時代の男友達二人に合い、一緒に飲んで話をしている回が面白かった。一人がオーディオオタクでそんな展開になっていく。



 ケーブルの違いのことや、スピーカーの下に何を敷くかといった定番的な話から、「アキバで有名なおじいさん」がいて、スピーカーを安定させるために畳をはがしコンクリートを塗り、それでも満足できなくて床板もはがし、家の下の地面にまで手を伸ばし…30mボーリング後にセメントを流し込み…笑ってしまう。


 もちろん実話ではないだろうが、「尊敬と啞然を込めて『岩盤ジジイ』って呼ばれている」というオチは見事だ。一つのことを突き詰めて考える人間の可笑しさは、やはり滑稽だ。さて、男友達は爆笑している主人公の花に対して「でもさ、笑っているけど、女の人の化粧だってそんなもんじゃない?」と何気なく呟く。


 高額化粧品に手を伸ばすご婦人ばかりでなく、女性の何割かは共通する体験や思いがあるのかもしれない。化粧品にもラインがあって…という話になり「自分からみたら全然違っても人から見たらほとんど同じって、化粧もオーディオも一緒かもね」と収められる。趣味嗜好ばかりでなく典型的な箴言かもしれない。


 しかしまた、「これは!」と決めて世界を突き詰めていく者の幸せも想う。まあこうした常識論で括る了見が、凡人の凡人たる所以と思わず自嘲する。だから、主人公花が友人からもらった6000円以上のリップクリームを時々塗って感じる愉悦に共感するのだ。ただ改めて違いへのこだわりを捨てては幸せが薄くなる。と思う。