百醜千拙草

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友愛と思いやり、タダほど恐いものはない

2009-11-03 | Weblog
超党派の「チベット問題を考える議員連盟」の牧野聖修会長(衆院政治倫理・公選法改正特別委員長、民主党)らは1日午前、都内のホテルで、来日中のチベット仏教の最高指導者、ダライ・ラマ14世と会談した。牧野氏は「再びお会いできることを願っている」とする鳩山由紀夫首相のメッセージを紹介した。
とのニュース。

 鳩山首相は、以前にも複数回ダライラマと会ったことがあるそうですが、チベット自治運動のリーダーとしてのダライラマが中国に目の仇にされているということで、中国を刺激しないため会見を見送ったということだそうです。日本の首相としてはやむを得なかったのだろうと思いますが、鳩山氏の政治モットーは「友愛」であり、ダライラマ14世は人間で最も大切な資質は「compassion」(思いやり)であると主張していますから、彼らの理想の相性は良いでしょうし、会談が行われていたら有意義なものになった可能性は高いと思いますから残念です。
 私個人的には、「友愛」をモットーとする日本の新しい首相が、「ヒューマニズム推進を支持するためにダライラマと会見して、人類平和を訴える」という姿勢を世界に見せるのは、悪くないと思いますし、そういう建前である以上、誰も会見を批判することはできないと思うのです。しかし、中国政府は、人類平和とか友愛とか思いやりとか、そういるレベルで思考できるほど余裕のある状態ではないでしょうから、チベットのリーダーと仲良くするものはみんな敵とみなして牽制してくるでしょう。話が通じない相手は敬遠するのが確かに無難かも知れません。中国政府が、チベットの自治権を与えてしまうと、それによって民族独立運動が各地で火を噴く可能性があるのではないかと想像します。もし複数の民族独立運動が同時に起これば、中国政府は制圧できないのではないか、少なくとも国内の内紛は、先進国化してアジアの覇権を手にしたいと思っているその野望実現への妨げになるでしょう。それを中国政府は怖れていて、チベットの自治を認めることができないのではないかと思うのです。しかし、どう考えても人口14億の広域にわたる多民族国家が一つの政府で治まるはずがないと私は思います。中国はやがて漢民族と非漢民族との間の対立がやがて激化し、ソビエト連邦が崩壊したように複数国へと分裂することは避けられないのではないかと想像しているのです。ソ連解体はゴルバチョフのペレストロイカ後に起こった庶民の生活の急激な不安定化が引き起こしました。中国の急激な近代化は既にかなりの貧富の差を生んできています。民族問題でなければ、いずれこの国内の貧富の差からくるひずみが中国を内から揺さぶるのではないかと私は思っています。
 私、ダライラマ14世の著書は一冊だけ読みました。2001年の「Compassionate life(思いやりのある生活) 」です。当たり前のことが易しく書いてあって、私はとても好感を持ちました。ヒューマニズムは政治に優先します。そうあらねばなりません。そしてヒューマニズムを推進し、人間が成長し、社会が成長するのに最も大切なことはCompassionという資質を育むことであろうと思います。中国政府がヒューマニズムをその中心に置いていないのは、単に政府としてそれだけの余裕がないのだろうと良いように解釈していますが、儒教や、仏教をはじめとする宗教が忘れ去られた中国で、伝統的に現実主義者である中国国民の気質を考えると、中国政府が「友愛とか思いやり」のような非物質的で目に見えないものに余り価値を認めないのも仕方がないのかな、とも思います。しかし、歴史を振り返れば、何千年も前は、おそらく世界で最も進んでいた国は中国でありました。法治国家を一時的にでも世界で初めて構築したのは中国であり、儒教や道教といった(神という概念の助けを借りない)現実に即した高度の思想的活動を行い高い倫理観を持っていたのも古代中国でした。これらの偉大な中国の遺産がなければ、今の日本は勿論のこと、ひょっとしたら中世以後のヨーロッパもありえなかったであろうと思います。あるいは、中国人は、産業革命以後の近代の物質文明社会で取り残されたということで、かつて世界最高の文化を持っていたという彼らの自尊心が必要以上に傷つけられてしまっているのかもしれません。中国政府のアグレッシブかつディフェンシブな対応というのは、そんな屈折した心理によるものではないかと想像したりするのです。

産經新聞が無料で読めるサービスをiPhoneユーザーに行っているという話を知りました。民主党政権となっても産経の民主党バッシングは全く止む気配はなく、自民党はちょっと復活不可能に思われますし、一体、その意図は何なのか、私はよく理解できません。経団連は、「民主党政権にすり寄っても、自民党の時のような美味しい汁は吸えないだろう、どうせすり寄っても無駄ならば、とことん民主を叩いた方が良い」そう考えているのでしょうか。そうなら、iPhoneの無料サービス、世の中、タダほど恐いものはありません。iPhoneユーザーの若い世代に、反民主党メッセージを吹き込み、世論コントロールを企み、国民の生活よりも大企業の利益とGDPを優先してくれる政党の人気復活を図るための策ということです。無料サービスにして、新聞社としての利益を犠牲にしても、反民主党メッセージが国民に浸透してくれれば、もとは十分とれる、そう考えているわけで、大企業がこれまで自民党の優遇政策のおかげで、国民の生活の犠牲の上に、どれほど潤ってきたか、よく分かります。この無料サービスで、そのうち、国民が「トヨタ様やキャノン様のおかげてワシらは喰っていけるのじゃ、ありがたいことじゃ」とでも思ってくれたらシメたもの、と考えているのでしょう。iPhoneユーザーの若い世代は情報世代で、そんな経団連、自民党の広報誌の提灯記事を鵜呑みにはしないだろうと私は楽観してはおりますが。
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