百醜千拙草

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アメリカの民主主義

2024-11-19 | Weblog
プーチンは、9月、「もしアメリカ製のミサイルがロシア領内で爆発するようなことがあれば、それはロシアとNATOの直接戦争となる」と警告しました。プーチンのこの発言に見られるようにウクライナ戦争の本質は、30年にわたるアメリカによるNATO東進に対してのロシアの反応であり、ウクライナを使った米露のプロキシ戦争といえます。アメリカの意図はチェイニーなどのタカ派、ネオコンの対露強硬策に加えて、アメリカ軍産の戦争ビジネスでしょう。それはブリンケンがイスラエルのジェノサイドをアメリカがアメリカの公金で支援する正当性を問われた時に答えた理由と同様です。
Lame duckのバイデンは、残る1ヶ月あまりで、できる限り、ウクライナ戦争をエスカレートさせ、トランプが戦争をやめられない状況に持ち込もうとしているかのように、このタイミングでウクライナに長距離ミサイルの使用を許可しました。長距離ミサイルや核ミサイルの使用に関しては米露間でいくつかの協定がこれまで結ばれましたが、アメリカがロシアの協定不履行を口実に一方的に破棄してきたという歴史があります。勝ち目のない戦争で追い詰められたゼレンスキーは、ヤケクソで長距離ミサイルを使ってロシア領内の攻撃をする可能性があり、そうなった場合にはプーチンの我慢がどこまで持つかわかりません。ウクライナを消滅させるだけですめばいいですけど、プーチンはNATO(すなわちアメリカ)との直接戦争になる、と何度も警告していますから、それはロシアのアメリカへの核攻撃、すなわち第三次世界大戦と繋がりかねず、そうなったら歯止めはありませんから、人類の破滅です。

「Deep Stateを解体する」とトランプは言い、次期政権に起用されるイーロン マスクは「政府の財務情報を公開する」と公言しました。トランプはネオコンを政権から一掃し、ウクライナ戦争を1日で終わらせる、と言っていますから、この痴呆老人のとびっきり臭い最後っ屁は、ネオコン、軍産の指図なのでしょう。

Deep Stateという概念そのものは陰謀論とは言えません。確固とした特定の存在とは言えないというだけです。日本では、かつて、ドジョウ野田は「シロアリを退治する」と言い、民主党政権は「霞ヶ関を解体する」と言っていましたけど、政権を得た後、すっかりミイラ取りがミイラになり、見事にコケました。それでは、東大財務官僚が日本におけるDeep Stateかと言われたら、そういうものではないと思います。構成因子の利害に従って自然と形成されたシステムの集合的意思、メタ意識とでもいうべきものがDeep Stateの本体なのではないかと思います。何らかのシステムが長期にわたって存在し、その運用に個人の利害関係が絡めば、腐敗は生まれてきます。

さて、トランプはどうでしょうか?アメリカが掲げる錦旗である「民主主義」に則って、民主的手続きで選ばれた大統領ですから、民主主義に則った形で、民意に従って権力を行使することが「正しい」ことで、よって、国民の意志とは無関係に政治に介入する「Deep State」というものがあって、それを解体するというなら、正しいことには違いありません。

しかるに、危ういのは、トランプがDeep Stateをどう定義し、具体的に誰を標的にするかということで、それは恣意的になりかねず、トランプの個人的な好き嫌いや思い込みで行動し、暴走しうかねないということでしょう。また、トランプのようなタイプは、頭の良い官僚にとっては、むしろ扱い部分もあるかもしれません。ならば、そもそもトランプに改革などできるのかという疑問は残ります。結局、トランプ一期目同様、国民を失望させて終わりではないかというシニカルな思いは拭えません。

今回のトランプ人気も、第一期のトランプ政権の時と同じく、トランプが「ヒラリーやバイデンやハリスではない」という理由で人々は期待を持っているだけだとことだろうと想像しています。ネオコンや彼らと繋がる利権団体をトランプがターゲットにしているのは明らかですが、彼らがトランプのような男に素直にやられてしまうとは思えません。それに、「取引」の損得で思考する俗物のトランプですから、取引次第では容易に転ぶかもしれません。

もしトランプが従来のエスタブリッシュメントの外から来て、Status quoを打破する救世主であるならば、下でプーチンが語っているような「アメリカの民主主義」を打ち砕いてもらいたいものです。ま、トランプに「民主主義を守る」とか「人道主義に立つ」とか「人類と地球の平和的存続に邁進する」とか、そんな広い視野に立った高邁な考えはないでしょう。

先日の発言を聞いても、国際社会がほぼ異口同音に非難するイスラエルのジェノサイドに関しても、イスラエル支援を継続し、イスラエル抗議運動を抑圧する方針のようです。それは、思うに、トランプを支援してきたAdelsonのようなシオニスト ユダヤの意向を受けたものと思われ、結局は、こうした一部の大金持ちがトランプを支援してきた以上、イスラエル支援がトランプにとって「良い取引」だと思っているからでしょう。

敢えて言うならば、トランプは広く長期的な視野からアメリカはどう振る舞うべきかというような深い思想や洞察はなく、単に目先の損得にしか興味のない単純近視眼男ではないかと思っています。つまり、人々が危惧するトランプの予測不能さ、危うさというものは、一国のリーダーとしての志、資質の欠如、端的に言えば知性の欠如、むしろ知性をバカにする反知性主義ゆえでしょう。しかるに、腐敗したアメリカ政治によって忘れ去られた人々は、トランプのような人間に希望を見出すしかなかったのだろうと思います。ならば、アメリカの病は深刻です。

一期目、トランプはRust Bestと言われる斜陽になった重工業産業地帯の「忘れ去られた」人々の不満に手を突っ込み、彼らの不満を掬い上げることで票を集めました。しかし、そうして彼に投票した人は、結局、期待を裏切られて失望し、バイデンを選ぶことになりました。そして、バイデン政権によって彼らは更なる失望を味わい、それならトランプの方がマシであったと思い直した、それが今回であったと思います。

トランプが彼らを救うことができるかどうかはわかりませんが、悲観的です。保護主義的政策で彼らの産業の再復興を目指すとは口で言っていますが、どうでしょう。イーロン マスクはトランプを支持した理由として、移民政策を挙げています。政権を決めるのはSwing Statesでの票で、民主党政権は、彼らの支持基盤であるヒスパニック、黒人、外国移民の票をそうした州で集めるために、移民を促進し、不法移民の合法化を進めようとしているというのがマスクの主張です。それが、「オハイオでは移民がペットの肉を食べている」とトンデモ発言をしたトランプをマスクが支持する根拠の一つでしょう。

しかし、それでも私は振ればカラカラ音がするようなハリスよりはマシだろうとは思っています。ま、立民が自民党よりマシという程度の差に過ぎませんが。来年の春には、トランプが何をしようとするのか、明らかになっていくでしょう。バイデンがプーチンを本気で起こらせてしまわない限り、トランプは、少なくともウクライナでの戦争を終わらせるであろうと期待しています。その点でトランプが「戦争を始めない」と公言した点は、とりあえず評価しています。

さて、Putinがアメリカの「官僚政治」について、語っている映像がありましたので紹介します。


私は、これまで3人のアメリカの大統領たちと話をした。彼らは政権に来て、そして去っていったが、政治は誰であっても同じだ。なぜだかわかるかね?それは、強力な官僚システムがあるからだ。誰かが選出されると、彼らは考えを思いつく。そうして、ブリーフケースを持って、ネクタイの色は違うがちょうど私のようにダーススーツに身を包み、良い身なりをした人々がやってくるんだ。彼らは、何をどのようにするか説明を始める。そして、全てが変わってしまうのだ。これが、全ての政権において、起こってきたことだ。物事を変えることは簡単ではない、と私は皮肉でなく言える。それは、決して彼らがそうしたくないからではない、それは難しいのだ。オバマを例にとってみよう。先進的でリベラルな民主党党員だ。彼は選挙の前は、グアンタナモを閉鎖すると言ったのではなかったか?そして閉鎖したか?いや、しなかったのだ。なぜだと聞きたい。閉鎖したくなかったのではない、できなかったんだ。本気でやろうとしたが、成功しなかった、なぜなら、それはとても厄介なことだと分かったからだ。これは中心的な事件ではないが、重要なことだ。ちゃんとした裁判も調査もなく、何年も人々が鎖に繋がれてそこに収容されているというのは理解し難いことだ。フランスやロシアでそんな事態を想像できるか?それは大惨劇になるだろう。しかし、アメリカ合衆国では、起こり得ることで、現在まで続いている。
このことは「民主主義」の問題に繋がる。ところで、私はこの例を、ものごとは我々が考えるほどシンプルではないということを示すために紹介したのだが、とは言っても、私は控えめではあるが楽観視している。私たちは重要な問題については、合意を形成するに至るはずだと私は信じているんだ。

アメリカのDeep Stateに関係してのプーチンの言葉:
「世界の95%のテロ攻撃はCIAによって起こされている。CIAはアメリカ国民の利益のためにあるのではない。CIAはDeep Stateのはぐれもの因子であって、新たな世界秩序を目論む世界の支配者たちの意思の現れだ」
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