百醜千拙草

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今後のウエストバンク

2024-11-12 | Weblog
アメリカ大統領選は、大方の予想通り、トランプの大勝に終わりました。その後、トランプの「Deep Stateを解体する10ステップ」のビデオがネットで話題になりました。「Deep State」という陰謀論的概念をアメリカ大統領が公言するようになったことは感慨深いものがあります。今時、民主主義国家の政治とは民意の負託を受けた政治家が民意を反映して国家の政策を決めていくものだ、と素直に思っている人は少ないでしょう。日本やアメリカで一般国民がどんどん貧しくなっていく一方で一部の者だけが富と力を蓄積していっている現状と、これらの国の政府がやってきたことを見てみれば、誰でも、民意とは別の何らかの強い影響力を持つものが政治を操っていることを感じると思います。日本では昔から「官僚政治」という言葉がありました。東大出の官僚が、世襲ボンボンの政治家を振り付けして日本の政治を操ってきた現実を指す言葉です。民主党の政権交代前「シロアリ(天下り官僚)を退治する」と公約を掲げて当選した野田が総理になったあと、すっかりシロアリに喰われてしまったのを覚えている人もいるでしょう。「官僚政治」は日本版Deep Stateの一面と言えなくはないです。「官僚政治」という概念を陰謀論だと一蹴できないと同じく、「Deep State」は、「陰謀論」と無視するのではなく、正当な「仮説」として調査、研究の対象とすべきものだと私は思います。


トランプによれば、「ディープ・ステート」とは、「選挙で選ばれた政権に関係なく、政府の政策に不当な影響力を行使する、強力な官僚や役人からなる裏の集団」ということのようです。あるインタビューの中では、トランプは、それは、はっきりした形態を持たない様々な者の集合的な集まりだと「概念的存在」であることを認めた上で、しかし、ほぼ一方的に特定の組織を「敵」認定するいつものやり方で非難しています。 こういうやり方がトランプの危ういところです。

トランプ自身はどうなのか、という話になります。トランプ自身の利害、すなわち、彼の権力を支援することによって何らかの政治的見返りを期待するもの、は存在します。それも広い意味でamorphousなディープ ステートに属するものと言えるでしょう(定義次第ですが)。下に述べる通り、私は、民意とは別にトランプの外交政策を操るものの存在がパレスティナ問題の帰趨に大きく影響を与えると思っています。

さて、選挙後、トランプは「戦争を始めない、戦争を終わらせる」と公言しました。ウクライナで戦争の犠牲者60万人、ガザやレバノンでの犠牲者、推定20万人、その多くの責任はアメリカにあります。ウクライナでの犠牲者の多くは軍人と考えられていますから、責任の残りの半分はゼレンスキーとプーチンともいえますが、ガザは話が別です。アイルランド系ながら自称シオニストのジェノサイド ジョーとハリス政権が、パレスティナを違法に占領し子供を殺し続けるイスラエルへの軍事支援を盲目的に続けて、わかっているだけで2万人以上の子供、行方不明となっておそらく瓦礫の下で死体となった子供を合わせると10万人とも推定される子供の殺害に手を貸してきたのです。加えて、その殺害や迫害の方法は極めて非人道的でした。居住区の8割を完全に破壊し、全ての病院や教育機関を爆撃し、兵糧攻めにして子供を餓死させ、避難所に集まる人々の頭上に爆弾を落とす。書いていても怒りが突沸しそうな外道ぶりです。その今世紀最大のイスラエルの戦争犯罪の最大の共犯者がアメリカです。

ウクライナに関しては、トランプが言葉通りに、ウクライナへの軍事支援をひきあげるとすると、ウクライナは戦争継続は不可能となるでしょう。であるなら、プーチンが言ったように、ロシアが「本気を出す」前に戦争が終わりそうでよかったです。多分、ウクライナ東部州の自治をウクライナ政府が認め、ウクライナがこれまで通り中立を維持するという以前の形に戻って終わるのでしょう。結局、ウクライナのほぼ一人負け。ロシアも戦争でそれなりの損失、そして、ノルドストリームの破壊工作のあおりを受けたヨーロッパも損失、アメリカ国民も税金を戦争に回され損失、アメリカの金魚の糞の日本も盲目的にウクライナに無駄金使わされて多少の損失。儲けたのはアメリカ軍産だけ。こののまま民主党政権が続いて、プーチンを刺激し続けたら、核戦争まで発展する可能性もあったと思います。この点では、共和党の強硬派チェイニーが応援するほどの戦争屋政権であったバイデン政権の傀儡、ハリスが選ばれなくて良かったです。

ウクライナに関しては終わりが見えそうですが、それでは、イスラエルに関してはどうでしょう。トランプの最大の支援者がカジノ王、シオニストユダヤのAdelson家でしたから、トランプは彼らの意向は尊重したいと思っているでしょう。Adelsonは、ウエストバンクを完全にイスラエルのものとすることを望んでいたと言われています。とすると、ウエストバンクでの違法入植とパレスティナ差別の更なる激化を通じてのEthnic Cleansingに関しては、トランプは見て見ぬふりをするのではないかと想像します。

選挙後、次の政権人事の段取りをしていると伝えられるトランプですが、時期政権では、イスラエル支援、反イラン、反共であったMike Pompeoと共和党のPrimaryで争った同じくジェノサイド支援派のNikki Haleyを人事から外すという話。いわゆるネオコン(新保護主義者)と呼ばれてきた反共、強硬派は政権から一掃されるようです。これらの人事、つまり、イスラエル支援派のポンペオやヘイリーを外し、ネオコンを外したことはひょっとしたらトランプのイスラエル支持方針の転換を意味しているのではないかと希望を持ったりするわけですが、どうでしょうか?あるいは、例によって、彼の個人的な好き嫌いに過ぎないのかも知れません。

遠からずイランはイスラエルに報復しますし、ハマスもヒズボラもイエメンのフーチも抵抗を続けるでしょう。イスラエルによるウエストバンクでの違法入植とパレスティナ人による暴力は連綿と続き、この3ヶ月ほどでも50人以上のパレスティナ人がウエストバンクでイスラエルによって殺されていると言われています。ウエストバンクでは、ファタハよりもハマスを支持するパレスティナ人が増えているという話もあり、違法入植がこのまま進行すれば、ウエストバンクでも武力蜂起が起こるかも知れません。そうなったら、トランプは、一体、「戦争」をどう終わらせるつもりなのでしょう?今後を見るしかありません。もし、万が一、イスラエルへの軍事支援を人質に戦争を終わらせて、パレスティナとユダヤの平等な共存の道を開き、長期的な和平の道筋をつけれるのであれば、いくらトランプが犯罪者で傲慢な人種主義者でセクハラ親父の「黒い猫」であっても、イスラエルやアメリカ帝国主義の人類に対する犯罪という「ネズミ」を退治する「良い猫」ならば、私は彼の政治的業績を大きく讃えるのにやぶさかではありません。私がオスローのノーベル賞審査委員であれば、ノーベル平和賞三年分をあげても良いと思います。
ま、マーフィーの法則によれば「期待は裏切られる」ものですが。

さて、大統領選を振り返ると、私が興味を持っていた第三極は当然ながらelectoral voteは一票も取れませんでしたが、popular voteではGreen PartyのJill Steinが0.4%、LibertarianのChase Oliverが0.4%、途中からトランプ支持に回ってキャンペーンを中止したのに候補者に名前が残ったRobert Kennedy Jr.が0.4%、その他が0.2%という得票でした。前回はGreen Partyは0.31%、Libertarian Partyは1.07%という結果でしたので、Green Partyはわずかに表を伸ばし、Libatarianは票を失ったものの、第三極全体としては著明な変化はなしでした。ま、こんなものでしょう。人々の意識はそう簡単には変わりません。
アメリカの教育システムの中で、アメリカは民主主義を体現した強国であって、世界のリーダーである、というようなお伽話を子供の頃から聞かされて、教室には国旗を掲げて、毎朝、国家忠誠を誓う儀式をやらされて育ってきたのがアメリカ人です。政治に関しては、二大政党制は議会制民主主義であるべき制度で、民主党か共和党かのいずれかに政権を託するのが民主主義だと思っているのでしょう。その実、両政党とも裏にいる連中はダブっていて、ラベルが違うだけだったりします。ここから先はディープ ステート陰謀論になってしまうので省略。

人間はその育った環境に大きく思考を左右されます。その一種の洗脳を離れて物事を客観的に見ることはしばしば極めて難しいもので、なぜなら「病識」を持つことは簡単ではないからであります。そのことを、かつてシオニストであったユダヤ系精神科医のGabor Maté は、シオニストユダヤ人との会話の中で、"live in a bubble"という表現を使って、覚醒を促そうとしました。アメリカが、ヨーロッパ人移住者のアメリカ原住民への虐殺や略奪を隠すように、イスラエルはイスラエル人に正しい歴史を教えません。イスラエルはカルト国家であり、国民の洗脳を行なっていると彼は非難します。実際、先日のアムステルダムでのサッカー試合でのイスラエル人の暴動と差別的行動を見ると、彼らが自省して目覚めることは簡単ではないだろう思わざるを得ません。子供の時から、国策として特権意識とアラブ系の人々への差別意識を植え付けられて育っているわけですから。


(訂正と追記)最初の投稿時にJackson Hinkleがホワイトハウス報道官に選ばれたという話を書きましたが、どうもガセネタだったようです。その部分は削除いたしました。

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