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朝の事々を終えてから、『よし!』と立ち上がり、腕をぶんぶん回し腰をくねくね振って石に向かう。
昨夕挑んだ状態のままになっている一輪車の縁を左手で押し、右手を石の下に差し込んで、朝一のリフレッシュした筋力で持ち上げる。
そのはずが、びくともしない。
荷台の鉄板がぺこぺこ鳴るくらいに力は入れているのに、石は動じないというのか平静を保っているというのか、どうにもならない。
結局この石はこの近辺に置くしかないのかと落胆あきらめモードになったが、頭を使おうと決めて帽子をとってくる。
同級生が亡き夫のものだけれど使って呉れと荷物一箱送ってくれた中に入っていた高級品。
亡き彼は派手好き高級品好みというわけで、私にすれば一生縁のないブランドものばかりで、ゴルフ用と思われるキャップをここで使う。
帽子を被った頭を荷台の縁に押し付け、石に覆いかぶさるように頭突きと全身の力で起こそうという考え。
誰かに見られたら『何をやってるんだろう・・頭がおかしくなったか』という異様な姿だろうけれど、一瞬に全力をかける。
動く・・上がる・・いけるぞ・・と、体でもっていき、一輪車が立つ時に勢い余って反対に倒れたらおおごとなので、立つ間際は慎重にやる。
慎重にやったは良いけれど、石が重すぎて、荷台の上で水平になりながら、ずりずりとずれたときに指をはさんでしまう。
引き抜くのが一瞬遅れ、指の先が少し痛かっただけだったから、すぐに手袋を外して指を口に入れる。
内出血はするかもしれないけれど、この程度なら大丈夫という感触で一安心。
これを入力している時点ではどの指だったかも判らなくなっているから問題なし。
ふらふらしながら、小さな段差を避けつつ回り道をして50m近くを運び、慎重に落して、少しずらしたところが3枚目。
4枚目は予定していた場所に納まったところだが、離れて観てみると、重かったことや苦労したことなんぞ誰も判ってくれないだろうと思われる程に前からここに在りましたという風情が小癪だ。
そうしてまた、動かしたい候補があらわれる。
どちらが重いか、今までの最高重量か、とにかくキャップをかぶった頭を使ってのチャレンジは続く。