和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

考えばえがする。

2013-11-23 | 地域
岩波少年文庫の寺田寅彦エッセイ集
池内了編「科学と科学者のはなし」。
そこに「津波と人間」という文がはいっております。
そこから引用。

「災害記念碑を立てて永久的警告を残してはどうかという説もあるであろう。しかし、はじめは人目に付きやすいところに立ててあるのが、道路改修、市区改正等の行なわれるたびにあちらこちらと移されて、おしまいにはどこの山かげの竹やぶの中に埋もれないとも限らない。・・・
昔の日本人は子孫のことを多少でも考えない人は少なかったようである。それは実際いくらか考えばえがする世の中であったからかもしれない。・・・
困ったことには『自然』は過去の習慣に忠実である。
地震や津波は新思想の流行には委細かまわず、
がんこに、保守的に執念深くやって来るのである。
紀元前二十世紀にあったことが紀元二十世紀にも
まったく同じように行なわれるのである。
科学の法則とは畢竟『自然の記憶の覚え書き』である。
自然ほど伝統に忠実なものはないのである。
それだからこそ・・・
二十世紀という空虚な名をたのんで、
安政の昔の経験を馬鹿にした東京は、
大正十二年の地震で焼き払われたのである。
・・・残る唯一の方法は
人間がもう少し過去の記録を忘れないように
努力するよりほかはないであろう。・・・・」(p184~185)
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