黒岩比佐子著「忘れぬ声を聴く」(幻戯書房)。
本のカバーには、題名のすぐ下に、
素焼きでできた土色した、鳥の絵柄。
なにげなく、本の帯をとると、
そこに隠れていた鳩の絵柄が出てくる。
白く塗られた鳩は、首と羽とがピンク色。
くちばしが黄色で、頭には薄紫の色が、
まるでキャップでも乗せているよう。
羽の付け根が緑色。
首から胸にかけてまるでピンクの襟巻をしているよう。
その鳩が、本の帯をはずすと、
あらわれて、ハッとさせられる。
いい装丁の本なのだ。
本の最後に載っている文が、「人生最後の一冊」。
たしか、文庫本で読んでいるはずなのだけれど、
すっかり忘れていて、はじめて読んだような気がする。
はじまりは
「久しぶりに実家に戻って、
たまたま昔の学習机の引き出しを開けてみたら、
なつかしいものが目に入った。
小学校時代の成績表の束である。
何気なく手に取ってパラパラとめくっていたとき、
四年生の一学期の『担任の意見』という欄に
目が釘付けになった。
『地震がきても、本だけははなさない』
先生にこんなことを書かれていたなんて・・・。
まったく覚えていない。
授業中に大きく揺れて、
騒然とする教室のなかで、
かたくなに本を読み続ける十歳の私。」
そして、この文の最後の方には
「最近、人生の残り時間が気になってきた。
人間は誰も永遠には生きられない。
一日生きれば、残りの人生から一日が減ったことになる。
人生で読める本の冊数も、少しずつ減っていくわけだ。
子供のころから、
どんなときも本はかけがのない友人だったが、
いまもなお、
『本を読むこと』以上に楽しいことを私は思いつかない。
自由に使える時間があれば、
本を読んでいたい。もちろん、
一生かかっても読みたい本をすべて読むのは不可能だろうが、
読むべき本を読まないまま死んでいくのは、やはり悔しい。
・・・・・・
最後の一冊の最終頁を読み終えて、
満ち足りた思いでこの世に別れを告げる。
私にはそれが最高に幸福な人生だと思える。
ほかに何も望みはないが、
墓碑銘にこんなふうに彫ってもらえたらうれしい。
『本を愛し、臨終の瞬間まで本をはなさなかった』と。」
うん。これから、ときどき、
この本のカバーを見ることにする。
本のカバーには、題名のすぐ下に、
素焼きでできた土色した、鳥の絵柄。
なにげなく、本の帯をとると、
そこに隠れていた鳩の絵柄が出てくる。
白く塗られた鳩は、首と羽とがピンク色。
くちばしが黄色で、頭には薄紫の色が、
まるでキャップでも乗せているよう。
羽の付け根が緑色。
首から胸にかけてまるでピンクの襟巻をしているよう。
その鳩が、本の帯をはずすと、
あらわれて、ハッとさせられる。
いい装丁の本なのだ。
本の最後に載っている文が、「人生最後の一冊」。
たしか、文庫本で読んでいるはずなのだけれど、
すっかり忘れていて、はじめて読んだような気がする。
はじまりは
「久しぶりに実家に戻って、
たまたま昔の学習机の引き出しを開けてみたら、
なつかしいものが目に入った。
小学校時代の成績表の束である。
何気なく手に取ってパラパラとめくっていたとき、
四年生の一学期の『担任の意見』という欄に
目が釘付けになった。
『地震がきても、本だけははなさない』
先生にこんなことを書かれていたなんて・・・。
まったく覚えていない。
授業中に大きく揺れて、
騒然とする教室のなかで、
かたくなに本を読み続ける十歳の私。」
そして、この文の最後の方には
「最近、人生の残り時間が気になってきた。
人間は誰も永遠には生きられない。
一日生きれば、残りの人生から一日が減ったことになる。
人生で読める本の冊数も、少しずつ減っていくわけだ。
子供のころから、
どんなときも本はかけがのない友人だったが、
いまもなお、
『本を読むこと』以上に楽しいことを私は思いつかない。
自由に使える時間があれば、
本を読んでいたい。もちろん、
一生かかっても読みたい本をすべて読むのは不可能だろうが、
読むべき本を読まないまま死んでいくのは、やはり悔しい。
・・・・・・
最後の一冊の最終頁を読み終えて、
満ち足りた思いでこの世に別れを告げる。
私にはそれが最高に幸福な人生だと思える。
ほかに何も望みはないが、
墓碑銘にこんなふうに彫ってもらえたらうれしい。
『本を愛し、臨終の瞬間まで本をはなさなかった』と。」
うん。これから、ときどき、
この本のカバーを見ることにする。