和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

その草分け。

2014-02-03 | 短文紹介
毎日新聞2月2日の「今週の本棚」に
鶴見太郎著「座談の思想」(新潮選書)を
堀江敏幸氏が書評しています。

広範囲にわたる内容から、
どこを多めにとりあげているかを着目。
うん。この箇所でしょうか。

「・・・・しかしそこには、
三つ以上の声を集める配役と司会を担う
存在が必要になる。
座談会を看板企画に仕立て上げた
『文藝春秋』の創刊者菊池寛は、
その草分けのひとりだ。
参加者を巧みに組み合わせ、
殺伐とした空気にならないよう、
また専門知識のない読者でも
理解できる言葉を念頭に置きながら、
菊地は1927年3月号の、
芥川龍之介、山本有三をまじえた
『徳富蘇峰氏座談会』を皮切りに、
長谷川如是閑、幸田露伴、里見らを
登用した印象深い出会いの場を提供し続けた。
一方通行や質疑応答に終らない往還のある言葉が、
単発の論文からは生まれることのない
豊かな思考のうねりを導く。
馴れ合いとは別種の、
緊張感に満ちた相互信頼が
そこにあった。

ただし、事前のシナリオなしで
進んで行くこの自由な空気は、
戦中の抑圧と相容れなかった。
長谷川如是閑の、時流におもねらず
『本来の意味での中立を保つ』姿勢と、
それをわずかな言葉で支持しつつ
話を進める菊地の司会。
戦中戦後は、
話し手の見極めと確保が難しくなって
企画そのものが減っていくのだが、
その推移から逆に、
座談会になにが必要であったかを
炙り出す筆者の筆もまた、
『本来の意味での中立』を
うまく保っている。」

うん。鶴見太郎の他の著作を
読んでみたくなります(笑)。

コメント (2)
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