和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

感染症と磯田道史。

2020-04-10 | 道しるべ
磯田道史氏の雑誌掲載文
「『感染症の日本史』~答えは歴史の中にある」
を読む。11ページです。

どこから引用しましょう。
テレビニュースやワイドショー番組は敬遠して、
ユーチューブの対談番組を取捨選択している。
それが、私の今日この頃(笑)。

さて、磯田氏は、この文を書くにあたって、どうしたか?

「衛生政策で有名な後藤新平は、

『寝覚めよき事こそなさめ、世の人の、
 良しと悪(あ)しとは言ふに任せて』と詠みました。

この掛軸を懸けて、私は今、これを書いています。
緊急時のリーダーは世評は放置し、慈心良心に従って
断行する必要があります。・・・」(p105)

場所への注意があります。

「スペイン風邪の際、
学校、劇場、教会、大型販売店、娯楽施設などを閉鎖し、
葬儀や結婚式も禁止し、いち早く集会規制と行動規制を行った
米国のセントルイス市と後手に回った米国のフィラデルフィア市では
死亡率に大差が出ました。セントルイスは死者を半減できたのです。
この教訓からすると、
外出・集会の自粛は、経済的に苦しくても効果があります。

感染症の流行拠点になるのは、
病院、学校、鉄道、船、軍隊など、人が『密集』『移動』するところです。
100年前は連絡船の港=青森と貿易船の港=神戸で、
今は空港や駅の乗降客の多い東京が危ないのです。

新型コロナも、鉄道職員やバス運転手の感染が
いち早く報告されましたが、スペイン風邪の時も同様です。
まず兵士、学生、郵便局員、鉄道員、船員から感染しています。
当時の記事には『鉄道沿線各地に流行』とあり、人の移動とともに
流行が広がったことが分かります。・・」(p104)

当時の米国でも、行動規制を行った市と、それが後手に回った市
とでは違ったことが数値化されているのでした。

各市の間でも、違いがある。ということ、
省庁の間でも、違いがある。ということを以下に引用。

「今の自衛隊は、感染症対策が行き届いているようです。
新型コロナの感染者が出たクルーズ船で、軽装備で船内に入った
厚生労働省の職員は感染しました。感染症の担当省庁が職員を
守れなかったのは残念で、省幹部の指揮に問題があります。
一方、陸上自衛隊は見事で防護策を徹底し、一人の感染者も出していません。
感染症対策のノウハウを他の省庁とも共有してもらいたいものです。」(p105)

普段からの日本人の生活習慣への指摘も
明快にされておられます。

「日本が欧米より流行速度が遅いのは、
BCG接種率うんぬんも研究すべきですが、
日本人の生活習慣も一因でしょう。
我々は、手洗い、うがいをし・・。

マスクも着用し、単体のウイルスは微細で
マスクを通り抜ける大きさですが、微量なら、
人体は自然免疫でやっつけます。自分の咳を
飛ばさず、他人のウイルス飛沫の大きな塊を
カットするのでマスクは有効です。

我々は『お辞儀の文化』で・・・
土足で家に上がるのが西洋の文化ですが、
日本人は玄関に靴を脱ぎ、コートも大抵は入り口にかけ
・・・さらに消毒をやれば、感染防止効果は大きいはずです。

こうした生活習慣は、古くからの日本文化に根づいています。
手洗いする『禊ぎの文化』と『内と外』を峻別する『ゾーニング文化』
です。・・・これが感染抑止に効いているのかもしれません。
・・・」(p106)


うん。この磯田道史氏の文は、今日発売の文藝春秋に
掲載されておりました。私の引用はたどたどしいので、
本文を直接読んでいただきたいのですが、
うん。もう一ヶ所引用させていただきます。

「・・鎖国下でも『天然痘』や『コレラ』などが
侵入してきました。今から約200年前の1822年、
コレラの世界的な大流行が日本をも襲いました。
・・・オランダ商人が持ち込んだことが分かり、
音訳して『酷烈辣(これら)』『狐狼狸(ころり)』
などと称されました。・・・・・

1858年に、コレラが、再び日本を襲いました。
この時も長崎に寄港した『ペリー艦隊』から
感染が広がっていて・・・・・
攘夷思想の背景には『西洋=病原菌』とみる状況があり、
これが日本史を動かすエネルギーになった面があります。

この時、コレラと闘った幕末の蘭学医たちの気概には頭が下がります。
洋学塾を開き、天然痘予防に貢献した緒方洪庵は、
『事に臨んで賤丈夫となるなかれ』と弟子たちを鼓舞。
弟子たちは往診に奔走、死者も出ました。洪庵のもとには、
『誰々が討ち死』という手紙が続々と来ました。

感染爆発時に、医者は、最前線に立たされます。
火事の時に消防車が危ないからと出動しないことはありません。

・・・教訓があります。
『プライマリケアの防護』、最初に診察する医療者の防護が重要です。
防護服やN95マスクなど医療資源を適切に配分して
医療者と病院を守る策を立てねば・・・・

イタリアでは、こうした防護が不充分で、多くの
医療関係者が感染し、病院が流行の拠点となり、
『医療崩壊』が起きて、多くの死者が出てしまいました。」
(p100~101)

はい。私の引用よりも
雑誌を買って読まれることをおすすめ。
「文芸春秋」5月号は960円で本日発売。
本文は、私の紹介よりも十倍の内容量。

(磯田氏の講演会へ行かれた気分でもって
読まれると960円も無駄にならないですよね)

私は、磯田道史氏の文だけ読みました。
はい。これで十分(笑)。
また、あらためて、読み直すことにします。

注・・・『賤丈夫(せんじょうふ)』とは、心のいやしい男のこと。




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