和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

読んでないんです。

2025-02-13 | 好き嫌い
本を読むにも、テクニックがあると気づかせて頂けたのは、
丸谷才一著「思考のレッスン」(文藝春秋・のち文春文庫)でした。

読めばいい、だけではなさそうなのです。

丸谷】 たとえば『古今』を読むなら、
    窪田空穂の本で読むのが僕は一番好きです。

    岩波の『日本古典文学大系』版の『古今』は、
    どうも読みにくい。活字の組み方も悪いし、
    注釈も何だか事務的な感じで、簡単すぎてよくわからない。

    それにくらべると窪田空穂の注は、
    心がこもっているようでいいなあと思って読んでいました。

    同じ岩波でも、『新日本古典文学大系』の小島憲之・新井栄蔵
    両氏の注はいいですね。組み方もいいような気がします。

                ( レッスン4・本を読むコツ )


 このレッスン4に、『ドン・キホーテ』が出て来るのでした。

丸谷】 ぜひお勧めしたいのは、
    翻訳小説は何種類かの訳を読んでみることです。

    僕は、セルバンテスの『ドン・キホーテ』が、
    会田由先生の訳ではどうにもダメで読めなかった。
    ところが堀口大學訳は読めたんですね。
    詩がたくさん入っている小説ですが、
    大學訳はその翻訳が実によくて、すらすら読めた。
    ただし、困ったことに大學訳のセルバンテスは正篇しかないから、
    僕は、続篇を読んでないんです。


はい。ここからが本題。

    いつだったか、中村光夫さんにその話をしたんです。

    『 評論を書いていて、セルバンテスの「ドン・キホーテ」に
     ついて触れたくなることがありますね。そのとき、
     カッコして( 私は正篇だけしか読んでないが )
     なんて書くと文章が締らなくなるし、
     あまりにも良心的ぶってるようでもある。
     しかし書かないと、嘘をついているような感じがあって
     具合が悪いし、困っているんです 』

    そのとき、中村さんは笑いながら、こんな話をした。

    『 正宗白鳥が僕に、「 明治の文学者のものを読んでいると、
      よくもこんなにたくさん外国の本のことを引き合いに出す
      と思っておかしくなる 」と言ったことがあってね 』

    『 それはどういう意味ですか 』

    『 つまり読まないのに読んだふりして書いてる、ということだね 』

    たしかに明治文学を読むと、むやみに西洋人の名前が出てきます。
    あの頃、まだ翻訳はないだろうし、原著だってなかなか手に入らない
    はずなのに、あんなに西洋をひけらかすのは、読まないで
    書いているに違いない。白鳥は、同時代人だから
    実情をよく知ってたんでしょう(笑)。


ということで、ああ、ブログはいいですね。
あれも読んでいない。これも読んでいないと、
気軽に書きこみする。その楽しみがあります。

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2 コメント

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おはようございます。 (和田浦海岸)
2025-02-14 09:33:47
おはようございます。きさらさん。

私は翻訳小説はダメ。
日本の小説も駄目なので、
外国ものはなおダメです(笑)。

それにしても、英日翻訳を通信講座で
学ぶなんてすごい。その志がいいなあ。

私はただただ、漫画とテレビの子でした。
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翻訳小説 (きさら)
2025-02-13 18:22:17
一時 翻訳小説に凝っていたことがありまして~
以前の翻訳は 日本語として こなれてない作品も多くて~ そういうのは疲れるので 先へ読み進めない。
それで 私は日本語は まあ大丈夫だからと
通信講座で 英日翻訳を学びました。
でも 元々の英語力がないせいで 誤訳ばかり(笑)
結構長い間 受講しましたが もうあきらめてしまいました。翻訳とは難しいものです。。。

「翻訳」と聞くと 私の達成できなかった
過去の哀しい学習を思い出します(笑)
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