詩や俳句は、余白がひろく、涼しげで。
はい。何だかそれだからか惹かれます。
ということで取りだしたのは、古本で
「定本中村草田男全句集」(集英社・昭和42年)。
はい。一冊なのでパラパラと夏をさがしながらめくります。
昭和29年の句に
文字知らざりし頃の鳴声青蛙 ( p390 )
うん。そういえば、虫や動物の句が気になりました。
父となりしか蜥蜴とともに立ち止る ( p60 )
あれれ、坂の上、というのがありました。
坂の上(へ)ゆ夏雲もなき一つ松 ( p73 )
青雲白雲夏の朝風一様に ( p89 )
萬緑の中や吾子の歯生え初むる ( p89 )
炎天に妻言へり女老い易きを ( p93 )
昭和15年の句に
詩よりほかもたらさぬ夫(つま)に夜の餅 ( p133 )
毒消し飲むやわが詩多産の夏来る ( p140 )
昭和17年の句に
夜の蟻迷へるものは弧を描く ( p178 )
昭和21年の句
人も夏荒れたる都八雲立つ ( p238 )
永久(とは)に生きたし女の声と蝉の音と ( p238 )
響爽かいただきますといふ言葉 ( p244 )
昭和22年の句
黴る日々不安を孤独と詐称して ( p256 )
炎天や空にさまよふ流行歌 ( p261 )
昭和23年の句
無学の責め前より寒気うしろより ( p291 )
冬の蠅ちりあそぶごと吾子の詩句 ( p292 )
昭和24年の句
緑陰の言葉は熱せずあたたかく ( p307 )
昭和26年の句
回想自ら密度に誇り法師蝉 ( p331 )
文字の上意味の上をば冬の蠅 ( p331 )
昭和28年の句
幼きをみな蜩どきの縞模様 ( p365 )
そうして、昭和29年の句
文字知らざりし頃の鳴声青蛙 ( p390 )
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