和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

文字知らざりし頃の鳴声

2022-08-09 | 詩歌
詩や俳句は、余白がひろく、涼しげで。
はい。何だかそれだからか惹かれます。

ということで取りだしたのは、古本で
「定本中村草田男全句集」(集英社・昭和42年)。
はい。一冊なのでパラパラと夏をさがしながらめくります。

昭和29年の句に

  文字知らざりし頃の鳴声青蛙   ( p390 )

うん。そういえば、虫や動物の句が気になりました。

 父となりしか蜥蜴とともに立ち止る  ( p60 )

あれれ、坂の上、というのがありました。

 坂の上(へ)ゆ夏雲もなき一つ松   ( p73 )

 青雲白雲夏の朝風一様に       ( p89 )
 萬緑の中や吾子の歯生え初むる    ( p89 )

 炎天に妻言へり女老い易きを     ( p93 )

 昭和15年の句に

 詩よりほかもたらさぬ夫(つま)に夜の餅  ( p133 )

 毒消し飲むやわが詩多産の夏来る      ( p140 )

 昭和17年の句に

 夜の蟻迷へるものは弧を描く     ( p178 )


 昭和21年の句

 人も夏荒れたる都八雲立つ     ( p238 )

 永久(とは)に生きたし女の声と蝉の音と  ( p238 )

 響爽かいただきますといふ言葉    ( p244 )

 昭和22年の句

 黴る日々不安を孤独と詐称して    ( p256 )

 炎天や空にさまよふ流行歌      ( p261 )


 昭和23年の句 

 無学の責め前より寒気うしろより   ( p291 )

 冬の蠅ちりあそぶごと吾子の詩句   ( p292 )

 昭和24年の句

 緑陰の言葉は熱せずあたたかく    ( p307 )

 昭和26年の句

 回想自ら密度に誇り法師蝉      ( p331 )

 文字の上意味の上をば冬の蠅     ( p331 )

 昭和28年の句

 幼きをみな蜩どきの縞模様      ( p365 )

 そうして、昭和29年の句

 文字知らざりし頃の鳴声青蛙     ( p390 )
 




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