和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

講座参考本⑧

2024-07-20 | 地震
武村雅之著「関東大震災 大東京圏の揺れを知る」(鹿島出版会・2003年)。
この本のカバーにある著者略歴を見ると
1952年 京都生まれ
1976年 東北大学大学院理学研究科博士課程修了(理学博士)
1981年 鹿島建設株式会社技術研究所入所
 ・・・・・

という経歴の持ち主で、大学の地震学研究者とは一味違うようです。
ということで、この本の最後の方に、気になった箇所がありました。

「・・・日本の教育が『ローカル』を排除し、『グローバル』を崇拝する
 方向に進んでいる現実があるのではないだろうか。

 例えば、高校で力を入れて教えている教科は、
 英語、数学、社会科では世界史、理科では化学と物理である。
 一方、影が薄くなりつつあるのが、国語、地理、生物、地学である。

 前者はすべて世界中どこで勉強しても同じ内容のものばかり、
 つまり『 グローバル 』、
 後者は日本でしか学ぶことができない内容を含むもの、
 つまり『 ローカル 』である。

 ・・・確かに国際化時代といわれ、世界の流れに遅れまいとして
 あせる気持ちはわかるが、こと地震防災に関しては、日本の自然環境を
 背景に自らの住む地域の地震環境や地盤環境を理解することが
 何より大切で、『 グローバル 』な知識のみでは歯が立たない。 」
                    ( p133 )

もう一ヵ所。これは引用しておきたいと思う箇所があります。

「私が、関東地震の調査を開始して感じたことは、
 過去の地震に関するデータは、確かに探せばあるにはあるのだが、
 それにかかる労力たるや大変なものである。

 研究者でさえ目先の成果ばかりを
 要求される現状では手が出しにくい。

 いわば『 好き者 』以外入り込めない世界である。
 さらに、たとえ『 好き者 』が現れたとしても、
 その人が発掘収集したデータは、その後、持っていく場がない。
 つまり一代限りでまた闇の世界へ戻らざるを得ない。
 これが現状である。 」(p135)

『安房郡の関東大震災』というテーマは、それ自体が『ローカル』なんだ。
どうも関東大震災に関しては今まで学者は、安房郡へ手を出しにくいようだと
そんな背景が、よく分かった気にさせてくれます。
はい。いろいろと読み方を触発させてくれる一冊です。
もうすこし、座右に置いておくことにします。



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