和田浦海岸

家からは海は見えませんが、波が荒いときなどは、打ち寄せる波の音がきこえます。夏は潮風と蝉の声。

直下地震の体験。

2024-08-20 | 地震
南三原村駅舎で、関東大震災を経験した
安房農学校第四回卒業吉野美佐夫氏の座談会での言葉に

「 私は式が終って駅へ行き、12時何分かの汽車を待っていまして、
  時間があるので外へでて遊んでいますと一番の地震がグラグラ
  ときたんです。そしてその次の地震で駅はつぶれ、
  駅の庭が割れてしまってゴロゴロころがってしまいました。

  とても立っておられませんでしたので、
  今新聞屋がある処に丁度竹やぶがありそこへ
  逃げ込んで4時頃までいてから家へ帰ったようなわけでした。 」

   ( p45  「安房農業高等学校 創立五十周年記念誌」昭和50年 )

安房郡北條の安房郡役所にいた飯田義人氏の文から

「 ・・・出しぬけに上下動が烈しく起った、ガタ、ガタ、ガタ、
  ミリ、ミリ、ミリ、瞬く間に柱は外れる壁は崩れる。

  私は子供の時より安政の地震の話を老人より聞かされ、
  又学校の先生よりは瓦の落つることの危険なるを教へられて居たが、

  横に揺れる気長な地震にばかり遇って居たので
  之まで地震の時に驚きの声を発したことは無かった。
  併しこの時ばかりは大声を発した。地震だ地震だ皆出ろッ
  ・・・・・・・      」(p831)

同じく郡役所から飛び出した小瀧作次郎氏の文には

「 地震だ、大地震だと外へ出た、丁度出遭ひ頭の
  工員五六名と手を継ぎ合せて輪になって
  郡役所の入口で倒れずに過ごした、
  前は池田屋、脇は議事堂、何れへ寄っても危険なので
  そればかり気にして居た、そのうちに
  池田屋も議事堂も倒れたので最早大丈夫と思った。
  稲葉さんは池田屋の角で転がって居た事を後で聞いた。 」(p834)


  ( 以上2つの文は「大正大震災の回顧と其の復興」上巻より引用 )


もうひとり、直下地震の体験を記述されている方を紹介。
「震災予防調査会報告」第百号(甲)に掲載されている
理学士阿部良夫氏の文
「関東大震災特に鵠沼海岸別荘地に於ける状況」から一部引用。

「・・・自分は室内に居たが、急に戸、障子、柱等がガタガタ
 ガタガタと揺れ、間もなくドーンと強い音響と共に
 はげしい強い上下動が一回あった。

 この時ほど水平動を雑へない純粋な上下動は
 今まで自分の出会はない処である。
 
 強い上下動はすぐに止んだけれども、
 用心の為に自分は縁側から庭に下りた。
 庭に下りた時には地震は全く止んで居り、
 庭に立って家をかえり見るに何の破損もない。

 『 出るには及ばなかった 』と思う間もなく
 遽に足元がゆらぎ出し、直に自分は地上にたおされた。
 側の松の小木につかまって立ち上ると
 又直にはねとばされる。上下となく、前後となく、左右となく、
 メチャクチャに土地が震れて立ち上る事は出来ない。

 丁度暴風時に甲板に在る様である。
 家の近くに居ては危険と思ったの
 地上をはって門の方へと向かった。  」(p333)
  

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