山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

遥か北の大地へ チェーホフ山(後編)  平成29年6月29日

2017年07月03日 | 圏外編
 チェーホフ山はかつて日本が樺太の北緯50度より南側を統治していた第2次世界大戦以前には高山植物の宝庫として天然記念物に指定されていた山である。鹿の食害をほとんど受けていないこの山ではそのままの植生が残っている可能性が高い。

 11時20分ごろに稜線の第一展望台に到着し、ここで小休止した後に山頂を目指して出発する。標高差こそもう300mほどしか無いものの、ここからはアップダウンのある長い稜線で、途中からはハイマツ帯の不明瞭な道となる。空模様もあまり
芳しくない。ここからは三脚を担いで歩くが、あまりゆっくり撮影している時間は無く、そのうえ霧でレンズが結露してしまうというアクシデントも起こってしまう。


    第一展望台のお花畑に咲いていたカラフトハナシノブ。


    カラフトハナシノブ


    このお花畑にはハクサンチドリがたくさん咲いていた。周辺にたくさん出ている葉はコウリンタンポポ。


    チシマザクラ


    綺麗なチシマザクラの花。


    ムラサキツリバナ(別名クロツリバナ)


    ウコンウツギ(スイカズラ科タニウツギ属)


    オオバナエンレイソウ。大型で豪華な花。


    森林限界は標高約900m付近。ハイマツ帯を進む。風が強くて寒い。


    ハイマツの切れ間にはミツバオウレンがいっぱい。


    この奇怪な岩の下で風を避けながら昼食となる。時間は12時半。

 奇岩の下で12時半となり、昼食となる。相変わらず天候がいまひとつのうえに風が強い。この先の第3岩峰まで約1時間、そこから山頂までは往復で3時間くらいかかるらしい。今のピッチだと下山が夕方8時過ぎになってしまうとのことだ。ガイドさんと添乗員で相談のうえ、この先の第3岩峰周辺のお花畑を見て撤収することになる。前の週のツアーも悪天候でここまでだったそうだが、天候が良かったとしても、花を見ながら山頂までは難しかったと思う。


    マルバシモツケ


    見えてきた第3岩峰(展望台)直下の岩。


    第3岩峰の周辺に咲いていたハクサンイチゲ。


    葉の幅が広く先端が尖らないことから、エゾノハクサンイチゲと思われる。


    イワウメの群落


    イワベンケイ


    ??もうすぐ咲きそうな上の花も下の葉っぱも何だかわからず。


    チシマゼキショウ(ユリ科チシマゼキショウ属)


    おそらく特産種のカラフトサイコ


    カラフトサイコ。レブンサイコに近い。


    少し天候が回復。天気が良ければ向こうにはオホーツク海が見えたのだろう。


    山頂は隣のピークを越えてその先に見えるピークのさらに先。遠過ぎる・・・。

 一瞬見えた稜線の先はまだ果てしなく遠く見えた。もっと高山植物を見たいという思いもあったが、天候悪く道程も長い。ここまでで撤退することとなる。

 帰りは少しわがままを言わせてもらい、いちばん先頭のガイドさんに同行していただいて一足先に下りさせてもらい、第一展望台付近のお花畑を存分に撮影させていただいた。ここに咲くボタンキンバイはややオレンジ色がかっていてとても美しい。中には礼文島と同じような黄色い花も混ざっている。コウリンタンポポはたくさんあったが、咲いているのはほんの数本だけで、これが一斉に咲いたらさぞかし綺麗なことだろう。


    第一展望台付近のお花畑に咲いていたハクサンチドリ。


    カラフトハナシノブ


    チシマフウロ


    色鮮やかなコウリンタンポポはまだ数輪しか咲いていなかった。登山道脇には蕾がたくさん出ていた。


    コウリンタンポポ


    ボタンキンバイ。これは黄色いタイプ。


    こちらが見たかったオレンジ色のボタンキンバイ。


    素晴らしい!!


    ウラジロタデ


    ヤマブキショウマ

 大満足、とは言えないが、見たかったカラフトハナシノブとボタンキンバイは見ることが出来た。もうひとつ、カラフトゲンゲという赤紫色の花を見たかったのだが、残念ながらまだ開花していなかった。エゾゴゼンタチバナは山頂付近に群生しているらしいが、途中で少数だけ見られたその花はまだ蕾も出ていなかった。大雪山のような広大なお花畑を想像していたのだが、樺太の高山植物はハイマツの中の岩と土のところに散在的に咲いているという感じだった。おそらく、花の種類はほぼ8割は北海道と同じものなのではないだろうか。しかし、ガイドのワシリーさんの話ではサハリン北部にある蛇紋岩の山にはここにしか無い特産種が何種類も咲いているそうである。ただし、大きな町は無いのでテント泊になるそうである。機会があるならば、そのような場所にも行ってみたい。

 下山して車に乗り込むと、間もなく雨が降り出した。次第に雨脚が強くなり、あの場所で引き返していなければ、足元の悪い急斜面をスリップしながら下山することになっていたのだろう。引き返したことは適切な判断だったと思う。
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遥か北の大地へ チェーホフ山(前編)  平成29年6月29日

2017年07月03日 | 圏外編
 チェーホフ山は標高1040mほどの日本でいえば中・低山であるが、北の大地であるが故に気象条件は南アルプスの標高2,300mくらいに相当する。標高差こそ800mも無いトレッキングコースであるが、途中は急登の斜面あり笹とハイマツ帯の藪あり、さらに稜線に抜けてから山頂までかなり長く、決して侮れない山である。しかし、山上のお花畑には日本では利尻島でしか見られないボタンキンバイのお花畑や、カラフトハナシノブ、コウリンタンポポなどが咲き誇っているらしい。
 
 サハリンには梅雨は無いのだが、海に囲まれているために雲が発生し易く、なかなかすっきりとは晴れないらしい。私たちの前の週に開催されたほぼ同じ行程のツアーは、ずっと雨の悪天候で気温が低く、チェーホフ山は山頂を踏まずに引き返したということだ。我々のツアーは前日の28日に抜けるような青空が広がってくれたが、夜から雲が広がり山は雲に覆われてしまった。朝6時にモーニングコール、7時50分集合の予定だが、未明3時半に目が覚めてしまい、そのままウトウトしているうちにモーニングコールがかかる。手配していただいた特別車両に乗り込み、予定通り8時にホテルから出発となる。



    未明3時40分、ホテルの窓から見る景色。山は雲に覆われて少し雨が降ったようだ。


    朝6時の景色。チェーホフ山は写真の左側にあるのだが、完全に雲の中。おそらく山の上は霧か小雨だろう。


    装甲車のような特別車両に乗り込んで林道いちばん奥にある登山口まで移動する。林道はかなりの悪路だった。


    もうすぐ咲きそうなオニシモツケ。とにかくデカい。


    こちらはオオハンゴンソウか?

 サハリンは鹿の食害がほとんど無いそうで、北海道で問題となっているエゾシカの数はかなり少ないらしい。林道の脇や登山道沿いには背丈を越えるような青々とした草が元気に茂っていた。


    オオアマドコロ


    ミズバショウと思うが、こちらではヒメカイウも見られるらしい。


    オクエゾサイシン。暗い場所だったので手持ちで撮ると少しブレてしまう。


    トクサ(トクサ科トクサ属)。イノシシの食害に遭っていた。


    登山道脇に咲いていたノビネチドリ。


    ノビネチドリ。あまり数は多く無い。


    こちらはハクサンチドリ。稜線のお花畑にはたくさん咲いていた。


    サイハイラン


    コケイランが1株だけ。周辺を探せばあるのだろうが、探す間もなく先に進む。


    結実したエゾノリュウキンカ。


    ツマトリソウは普通に生えている。


    ゴゼンタチバナ


    オオヤマフスマだと思う。


    カラス岩に到着する。


    カラス岩。確かにくちばしと羽のようにみえるが、ずいぶん太ったカラスだ。

 カラス岩までは樹林帯の中の道で、ところどころロープが張られた急斜面がある。カラス岩から先は針葉樹林から笹交じりの広葉樹林帯に変わり、かなりきつい急斜面となる。途中から草原の混じるお花畑が見え始め、その中には見たかったカラフトハナシノブが咲いていた。


    カラス岩のあたりから見え始めたカラフトハナシノブ。


    急斜面の脇に咲いていたチシマフウロ


    チシマヒョウタンボク(スイカズラ科スイカズラ属)


    ミヤマハンショウヅル


    マルバシモツケ


    稜線の直下、姿を現したボタンキンバイ。


    カラフトハナシノブもたくさん咲いている。

 お花畑のある第一展望台に11時20分に到着、ここまで2時間少々かかっているが、想定していた通りゆっくり花を撮ったり探したりする余裕は無かった。しかしこれでも予定していたよりもピッチが遅いらしい。稜線上は予想通り霧が巻いていて展望が悪く、風が強くて寒い。カッパを着て先に進むこととなる。(後編に続く)
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