10月連休の甲斐駒ケ岳七丈小屋は紅葉真っ盛りということがあって激混雑することは承知していたのだが、どうしても撮影しておきたかった宿題があった。9月の連休にも訪れる計画を立てていたのだが天候に阻まれて入り口の竹宇駒ケ岳神社までは行ったものの気力が失せて登らずに終わっている。その宿題とは・・・甲府盆地の夜景はほぼ周辺の山から撮影を終えているものの、この甲斐駒ケ岳は撮っていない。それはこの山が険しいからでは無くて、古くから信仰の山として崇められている山で、石仏や祠が随所に立てられている。そのような神様が宿る信仰の山にテントを張って夜景を撮ることは不謹慎だろうと思っていたからである。かといって夜中に仙水峠側から登るのも大変だし、黒戸尾根はさらに長くて険しい。しかし、今年になってから花谷泰広さんが七丈小屋の小屋番をやるようになり、少しばかり無理が言えるようになってきた。おそらくは既に宿泊定員いっぱいになっているであろうが、無理を言って前日の午前中に電話を入れて頼み込み、なんとか泊めてもらえることになった。さらにもう一人、おまけ、いや本命(?)が追加となり、2人で小屋に泊めてもらうこととなる。
足の遅い私は前日竹宇駒ケ岳神社の駐車場に車中泊し、朝6時から歩き始める。連れは足が速いので1時間少々遅れて出発したが、刃渡りの鎖場のところで追いついて来た。そこから先は一緒に歩き、午後2時に七丈小屋到着した。小屋まで8時間かかったことになるが、私としては予定通りの時間である。少しばかり足が痛くなった。夕食は3回に分けて出され、この小屋の定番メニューである揚げたてのエビフライが振舞われた。そのクリーミーな揚げ加減と絶妙な味、今までに食べたエビフライの中で一番おいしかった。
食事が終わって後片付けのお手伝いを終えて外に出ると、ものすごい星空が広がっていた。登って来る時はずっと霧に巻かれて展望はいまひとつだったが、夜になってから回復してきた。月の出は7時半ごろ、それまでの間は月明かりに邪魔されず素晴らしい天の川を眺めることが出来た。小屋で知り合った女性数名を誘って星空の観察会を始める。星空の撮影をレクチャーするが、うまく設定できないカメラもあった。連れはいずこへ?と思ったら私の目の前でしゃがみこんで撮影していたのが連れのるたんさんだった。撮影に誘っておきながらすっかりほったらかしにしてしまった。
七丈小屋の上に立ち昇った天の川。肉眼でもはっきりと見えるMilky Wayが空を横切った。
これならばきっと明日は素晴らしい景色が見られるだろう。期待に胸躍らせて、8時には早々に寝る。
目覚ましは2時にセットしたのだが、電源を切ったはずのGPSが誤作動を起こしたらしく、12時ごろから鳴り始めたらしい。枕元に置いてあったのに睡眠薬でぐっすり眠っていた私は全く気付かず、隣で寝ていたるたんさんが見るに見かねて未明1時に起こしてくれた。GPSの電池を抜き取ってようやく鳴り止んだが原因は良くわからない。その後少し横になったが寝ていられるような時間ではなく、1時半に起き出して2時前には小屋を出発した。月明かりで星はあまり輝いていないが、澄んだ夜空が頭上に広がっている。そして目線の下には一面の雲海が広がっている。なんと素晴らしき景色なことか。文句無し、今日はいただき!頂の景色である。
七丈小屋テント場から見る景色。雲海が広がり、空にはおおいぬ座シリウスが輝いている。
8合御耒迎場。鳳凰山と富士山が見えてきた。空にはおおいぬ座が昇る。
静かに躍動する雲海。遠くに見えるのは八ヶ岳。
甲斐駒ケ岳の上に輝く17夜の月
いくら撮っても撮り尽くせないほどの素晴らしい月光夜だった。本日の目的地は鉄拳の立つ大岩がある9合目付近である。月光に照らされた鉄拳の大岩とその彼方に立つ鳳凰山と富士山、さらにその裾野に広がる甲府盆地の夜景を撮るのが今回の最大の目的であり数年来の宿題である。急登の岩場と鎖場を慎重に越えて大岩の下の展望地に午前4時半に到着した。水平線が少し明るみ始めて薄明が始まっており、ひときわ明るい金星が昇って来ていた。そのすぐ上にはオレンジ色の火星も輝いている。雲海の上に広がるこのうえない極上の景色となった。
雲海広がる月光夜。明るい星は金星、そのすぐ上に輝いているのが火星。
空高く昇ったオリオン座と冬の大三角形。そして北岳の左側に輝く星は・・・
北岳に輝くシリウスとカノープス。月明かりをものともせずカノープスが写ったが、肉眼では確認できなかった。単純に私の視力が悪いだけだろう。
雲海踊る月光の鳳凰山
その先、三脚を担いだまま岩を登ろうとしたのだが見事に失敗して1.5mほど滑り落ちて転倒した。幸い大事に至らず、膝を少し擦りむいた程度で済んだ。5時、目的地到着。夜明けまであと45分ほど、水平線はすっかり明るんで星の輝きは消え始めている。それでも明るい金星は煌々と輝いて見える。
鉄拳立つ大岩の夜明け。右に鳳凰山と富士山、左には金星が輝く絶妙の1枚(自画自賛)。
場所を変える。予定では鉄拳の向こうに甲府盆地の町灯りが広がるはずだったが、今回は雲海になった。
黎明の鳳凰山と富士山
雲海の上に広がる光のグラデーション。もうすぐ朝日が昇る。
雲海の日の出
同上
躍動する雲海に射す朝日
雲海広がる八ヶ岳
山頂で日の出を迎えようとする登山者にはたくさん追い抜かれたが、この界隈で日の出を迎えたのは私一人だけで、ほぼ独占した景色である。るたんさんには別の指令を出していたのだが、これほどの景色になるのであれば一緒に連れてきた方が良かったかと少しばかり申し訳なかった。
これだけの景色を見てしまうと、もはや腹いっぱいで甲斐駒ケ岳山頂は行かなくても良いかなとも思ったが、時間も早いことだしちょっと立ち寄って・・・などと思ったらちょっとどころではない。この先も気が抜けない急登の連続、いつものごとくヘロヘロになって山頂に到着、午前7時だった。既にたくさんの登山者が登って来ている。るたんさんとは途中で合流して山頂まで同行した。ゆっくり休んだ後、るたんさんは仙水峠に下山、私は小屋に置いて来た荷物を回収して長い黒戸尾根をテクテクと下山した。
紅葉の黄連谷と日向八丁尾根。いつかあの尾根を周回して歩ける日が来るのだろうか?体力的に不安がある。
雲海に昇る朝日
山頂石碑と北岳
躍動する雲海に浮かぶ鳳凰山と富士山
紅葉の早川尾根と北岳。栗沢山からアサヨ峰にかけてはもう上部の紅葉が終わっている。
紅葉の仙丈ケ岳
鋸岳と乗鞍岳、北アルプス
申し分無い景色に疲れは・・・吹き飛ばない(笑)。
さて、長い黒戸尾根の下山だ。7時40分から下山開始するが、見ごろを迎えた甲斐駒ケ岳の紅葉、さらにはこの雲海の景色、もったいなくてそんなに早くは下山できない。あちらこちらで三脚を取り出しては撮り歩き、七丈小屋に到着したのは10時だった。
雲海に昇る太陽
同上
紅葉と鳳凰山
紅葉盛りの甲斐駒ケ岳。8合目付近からPLフィルターを効かせて撮影。
8合御耒迎場
七丈小屋でココアをご馳走になりしばし休憩させていただき10時半から下山開始する。途中で超特急のごとく私を抜き去っていった七丈小屋の花谷君は小屋から1時間半で竹宇駒ケ岳神社まで下るそうだ。さすがに世界的なクライマーはレベルが違い過ぎる。私は5時間かかってようやく下山、3時半に駐車場に到着した。汗だくで完全に脱水状態のうえにかなり眠い。自宅に帰って体重を計ると2㎏以上も体重が減っていた。(3日もすれば戻るだろうが・・・。)
素晴らしき雲海の景色に出会えた今回の山行は先月の鳳凰山と並んで今年のベスト山行になるだろう。しかし・・・宿題であった甲斐駒ケ岳からの甲府盆地の夜景は片付かずに終わってしまったわけで、また来年に持ち越しである。
足の遅い私は前日竹宇駒ケ岳神社の駐車場に車中泊し、朝6時から歩き始める。連れは足が速いので1時間少々遅れて出発したが、刃渡りの鎖場のところで追いついて来た。そこから先は一緒に歩き、午後2時に七丈小屋到着した。小屋まで8時間かかったことになるが、私としては予定通りの時間である。少しばかり足が痛くなった。夕食は3回に分けて出され、この小屋の定番メニューである揚げたてのエビフライが振舞われた。そのクリーミーな揚げ加減と絶妙な味、今までに食べたエビフライの中で一番おいしかった。
食事が終わって後片付けのお手伝いを終えて外に出ると、ものすごい星空が広がっていた。登って来る時はずっと霧に巻かれて展望はいまひとつだったが、夜になってから回復してきた。月の出は7時半ごろ、それまでの間は月明かりに邪魔されず素晴らしい天の川を眺めることが出来た。小屋で知り合った女性数名を誘って星空の観察会を始める。星空の撮影をレクチャーするが、うまく設定できないカメラもあった。連れはいずこへ?と思ったら私の目の前でしゃがみこんで撮影していたのが連れのるたんさんだった。撮影に誘っておきながらすっかりほったらかしにしてしまった。
七丈小屋の上に立ち昇った天の川。肉眼でもはっきりと見えるMilky Wayが空を横切った。
これならばきっと明日は素晴らしい景色が見られるだろう。期待に胸躍らせて、8時には早々に寝る。
目覚ましは2時にセットしたのだが、電源を切ったはずのGPSが誤作動を起こしたらしく、12時ごろから鳴り始めたらしい。枕元に置いてあったのに睡眠薬でぐっすり眠っていた私は全く気付かず、隣で寝ていたるたんさんが見るに見かねて未明1時に起こしてくれた。GPSの電池を抜き取ってようやく鳴り止んだが原因は良くわからない。その後少し横になったが寝ていられるような時間ではなく、1時半に起き出して2時前には小屋を出発した。月明かりで星はあまり輝いていないが、澄んだ夜空が頭上に広がっている。そして目線の下には一面の雲海が広がっている。なんと素晴らしき景色なことか。文句無し、今日はいただき!頂の景色である。
七丈小屋テント場から見る景色。雲海が広がり、空にはおおいぬ座シリウスが輝いている。
8合御耒迎場。鳳凰山と富士山が見えてきた。空にはおおいぬ座が昇る。
静かに躍動する雲海。遠くに見えるのは八ヶ岳。
甲斐駒ケ岳の上に輝く17夜の月
いくら撮っても撮り尽くせないほどの素晴らしい月光夜だった。本日の目的地は鉄拳の立つ大岩がある9合目付近である。月光に照らされた鉄拳の大岩とその彼方に立つ鳳凰山と富士山、さらにその裾野に広がる甲府盆地の夜景を撮るのが今回の最大の目的であり数年来の宿題である。急登の岩場と鎖場を慎重に越えて大岩の下の展望地に午前4時半に到着した。水平線が少し明るみ始めて薄明が始まっており、ひときわ明るい金星が昇って来ていた。そのすぐ上にはオレンジ色の火星も輝いている。雲海の上に広がるこのうえない極上の景色となった。
雲海広がる月光夜。明るい星は金星、そのすぐ上に輝いているのが火星。
空高く昇ったオリオン座と冬の大三角形。そして北岳の左側に輝く星は・・・
北岳に輝くシリウスとカノープス。月明かりをものともせずカノープスが写ったが、肉眼では確認できなかった。単純に私の視力が悪いだけだろう。
雲海踊る月光の鳳凰山
その先、三脚を担いだまま岩を登ろうとしたのだが見事に失敗して1.5mほど滑り落ちて転倒した。幸い大事に至らず、膝を少し擦りむいた程度で済んだ。5時、目的地到着。夜明けまであと45分ほど、水平線はすっかり明るんで星の輝きは消え始めている。それでも明るい金星は煌々と輝いて見える。
鉄拳立つ大岩の夜明け。右に鳳凰山と富士山、左には金星が輝く絶妙の1枚(自画自賛)。
場所を変える。予定では鉄拳の向こうに甲府盆地の町灯りが広がるはずだったが、今回は雲海になった。
黎明の鳳凰山と富士山
雲海の上に広がる光のグラデーション。もうすぐ朝日が昇る。
雲海の日の出
同上
躍動する雲海に射す朝日
雲海広がる八ヶ岳
山頂で日の出を迎えようとする登山者にはたくさん追い抜かれたが、この界隈で日の出を迎えたのは私一人だけで、ほぼ独占した景色である。るたんさんには別の指令を出していたのだが、これほどの景色になるのであれば一緒に連れてきた方が良かったかと少しばかり申し訳なかった。
これだけの景色を見てしまうと、もはや腹いっぱいで甲斐駒ケ岳山頂は行かなくても良いかなとも思ったが、時間も早いことだしちょっと立ち寄って・・・などと思ったらちょっとどころではない。この先も気が抜けない急登の連続、いつものごとくヘロヘロになって山頂に到着、午前7時だった。既にたくさんの登山者が登って来ている。るたんさんとは途中で合流して山頂まで同行した。ゆっくり休んだ後、るたんさんは仙水峠に下山、私は小屋に置いて来た荷物を回収して長い黒戸尾根をテクテクと下山した。
紅葉の黄連谷と日向八丁尾根。いつかあの尾根を周回して歩ける日が来るのだろうか?体力的に不安がある。
雲海に昇る朝日
山頂石碑と北岳
躍動する雲海に浮かぶ鳳凰山と富士山
紅葉の早川尾根と北岳。栗沢山からアサヨ峰にかけてはもう上部の紅葉が終わっている。
紅葉の仙丈ケ岳
鋸岳と乗鞍岳、北アルプス
申し分無い景色に疲れは・・・吹き飛ばない(笑)。
さて、長い黒戸尾根の下山だ。7時40分から下山開始するが、見ごろを迎えた甲斐駒ケ岳の紅葉、さらにはこの雲海の景色、もったいなくてそんなに早くは下山できない。あちらこちらで三脚を取り出しては撮り歩き、七丈小屋に到着したのは10時だった。
雲海に昇る太陽
同上
紅葉と鳳凰山
紅葉盛りの甲斐駒ケ岳。8合目付近からPLフィルターを効かせて撮影。
8合御耒迎場
七丈小屋でココアをご馳走になりしばし休憩させていただき10時半から下山開始する。途中で超特急のごとく私を抜き去っていった七丈小屋の花谷君は小屋から1時間半で竹宇駒ケ岳神社まで下るそうだ。さすがに世界的なクライマーはレベルが違い過ぎる。私は5時間かかってようやく下山、3時半に駐車場に到着した。汗だくで完全に脱水状態のうえにかなり眠い。自宅に帰って体重を計ると2㎏以上も体重が減っていた。(3日もすれば戻るだろうが・・・。)
素晴らしき雲海の景色に出会えた今回の山行は先月の鳳凰山と並んで今年のベスト山行になるだろう。しかし・・・宿題であった甲斐駒ケ岳からの甲府盆地の夜景は片付かずに終わってしまったわけで、また来年に持ち越しである。