山梨百名山から見る風景

四方を山に囲まれた山梨県。私が愛して止まない山梨の名峰から見る山と花と星の奏でる風景を紹介するページです。

魅惑の御堂ルート(廃道)を行く 篠井山(後編)  平成27年4月19日

2015年04月24日 | 山梨百名山
 天気予報では午後3時ごろから雨の予報だったが、午前11時ごろから時折雨がぱらつく空模様となった。山頂まで残り0.7km、標高差300m付近まで到達したのが午後1時35分、そろそろ雨足が強まって来る可能性があること、山頂までまだ1時間以上かかるので、廃道ルートだけに下山に要する時間に不安がある。さらに雨が降ると高濃度食塩水や消毒用アルコールの効果が薄れるのでヤマヒルにやられるリスクも上がる。さっさと昼食をとって1時45分下山にとりかかる。

 足場の悪い谷のトラバースはザイルを木にひっかけて通過した。5mザイルを2つ折りにして木にかけるとギリギリの長さしか無い。さらに谷に下りるガレた斜面もザイルを使った。谷に下り立ったところで少し強い雨が降り出し、ザックカバーとカッパを取り出したところすぐに止んだ。人の入らない谷の中をうろついてみると、ハナネコノメがたくさんあり、苔生した岩の中からツルシロカネソウやツルネコノメが顔を出している。どの花もみずみずしくて生き生きとしている。


    標高1,100m付近から見上げる篠井山。


    谷のトラバース。ほとんど踏み代が無くつかまれるところも無い。右上の木にザイルをひっかけて通過する。


    谷に下り立つ。見上げる篠井山山頂方面。


    カンボジアのタプローム遺跡を思わせるような木の根。


    岩の上に苔の生した谷。


    ハナネコノメがたくさん。


    ツルネコノメ。みずみずしくて元気いっぱい。


    苔の中から顔を出すツルネコノメソウ。


    イワボタン(だと思う)。


    谷間に咲くツルシロカネソウ


    ツルシロカネソウ


    県によっては絶滅危惧種に指定されているミツバコンロンソウ。


    ミツバコンロンソウ

 登る時は本来の谷をトラバースするルートを使ったが、この道は崩落しそうで脆く歩きにくい。大きな尖った岩のある尾根に取り付けないものかとルートを探っていると、斜め上に登る細い踏み跡がありそれを辿ると容易に尾根道に出ることができた。足元に気をつけながら尾根道を進むと、小さな白い花が2種類咲いていた。


    まだ咲き始めたばかりの小さな花、ヒメイワカガミ。後ろに見えるのは篠井山。


    苔の上に小さな白いスミレ。


    フモトスミレ。5輪ほど咲いていた。

 その先は危険個所は無いのでヤマヒルに気をつけながらひたすら下るだけだ。登って来る時にスギ植林帯の上部で合流する境界見出し標の付いた尾根を発見した。そちらは笹が刈り払われていて真直ぐな歩き易い尾根だった。おそらくはフェンスの張られた植林広場あたりで合流するだろうという予想で、境界見出し標尾根を下りてみた。15分ほど下ったところでGPSの位置を確認してみると、予想とは全く違う方向に進んでいることがわかる。どうやら別の場所に抜けてしまうらしい。尾根を外れて道無きスギ植林帯の中を横切って下りて行くと、下に白い草地が見え始め、フェンスのある植林地に抜け出た。


    境界見出し標の尾根。真直ぐな手頃な傾斜の尾根道で歩き易い。しかし、そのまま進むと別の場所に出てしまうようだ。


    マメヅタがびっしりと付着した木。


    GPSで位置を確認し、下にちらりと見える草地に向かってスギ樹林帯の中を横切って下りる。


    朝通過したフェンスのある植林地に抜け出た。

 問題なのはこれからだった。登りでルートがわからなかったので、今度は尾根に付いたルート通りに下って行く。3.0kmの看板を確認したので道は間違っていないはずなのだが、沢に下りたところで倒木だらけ、ルートが崩落してしまっているようで右岸を見ても左岸を見てもルートが見つからない。沢筋を下るにも倒木が多過ぎて苦労しそうだ。止む無し、対岸の尾根に取り付いて尾根筋を下り、無事林道に抜け出た。出たところは登山口から100mほど上のところだった。入り口のところにあった3.2㎞看板とはかけ離れた場所なので、別のルートがあると思ったほうが良いだろう。


    下り立った沢は大荒れ状態。赤テープが巻き付けられているので道は間違っていないと思うのだが・・・


    右岸も左岸も道は見つからない。右手の尾根に取り付く。


    こんなところにエビネが・・・なんて感心している場合じゃない。


    抜け出た沢の入り口。どう見ても道は無い。


    向こうに見える車の先が登山口。100mほど上に抜け出た。

 時間は午後4時20分。山頂に行かずに折り返して正解だった。結局は朝間違えて登った尾根のほうが下りて来たルートよりも遥かにましだった。4時半に駐車場に到着し、ヤマヒルが付いていないかどうか服を全て着替えてチェックしたが、付いたのは撃退した2匹だけだった。

 前編で述べた嶺朋クラブメンバーが見つけて来たとんでもない(あまりとんでもなく無いかも知れない)花とはこれ。絶滅危惧種カイコバイモ。


    健気に咲いていました。


    甲斐の姫君カイコバイモ。


    少し時期が遅かった。花はしぼみ始めてしまっている。


    この山で発見されたのはおそらく初めてだと思う。


    カイコバイモ


    既に結実している株も見られた。

 山梨県では思親山が有名だが、その他に信仰の某山にあるのが知られているのみ。この山にあるという報告は見たことが無く、山梨県内では3ヶ所目といういうことになる。残念ながら少し花期を過ぎてしまっていたので、来年また訪れてみたいと思うが、体力・気力・技術を要するルートだけに気合を入れないと登れない。



    今回歩いた(と思われる)ルート。GPSログではないので若干狂っています。(GPSデータは花を探した場所がわかってしまうので、公開できません。)

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4 コメント

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根っこ凄いですね (河西秀吏)
2015-04-25 17:21:19
篠井山は南部町の山でしょうか。20年位前に三椏の写真を撮りに、5~6回行きました。無論、車で行ける範囲ですが結構奥まで林道が伸びていたような気がしますが。
岩を抱く巨木、アンコールワットの雰囲気は充分ですね。
根性には敬服します。明日は白馬村あたりのコブシでもと思っています。
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河西さんへ (ヨッシー)
2015-04-25 20:30:26
 篠井山は南部町の盟主です。裏側の奥山から登るルートはほぼハイキングコースですが御堂ルートはバリアンスルートで、今回の到達点からその先はもっと厳しいらしいです。奥山の林道はさらに先まで行けますが、崩落していて通行不能のことが多いです。

 甲府界隈の山はスミレのシーズンを迎えており、ここのところ風景では無くてスミレ探しに奔放しています。
返信する
蛭にも怯まず (うーさん)
2015-04-28 23:44:27
昨年の4月27日に山岳会最強メンバーに
お供させて頂きましたコースです。
やはり沢の処が花の宝庫だったんですね。
その場所で暫し休憩しましたが、全て見落としています。
ザイルを掛けた樹木も同じです。
「蛭にも怯まず」お疲れ様でした。
返信する
うーさんへ (ヨッシー)
2015-04-29 18:19:24
 やはりあの谷のトラバースはザイル無いと危険ですよね。大変なのは私が到達した場所の先だそうで、来年はルート極めてみたいと思っています。甲斐の姫君にもまた会いたいです。

 ヒル対策はかなりやって行きましたので、上から降って来ない限りは大丈夫と思っていました。アルコール消毒液は効果覿面です。
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