アウシューヴィッツ収容所などでポーランドに住んでいた270万人のユダヤ人が殺されたのです。ポーランド在住のユダヤ人の99%が殺されたと言います。私は非常にショックを受けました。暗然たる思いに捕らわれました。
占領したドイツ軍が、混在していたユダヤ人を摘発して、99%殺すにはポーランド人の強い協力がなければ出来ない事です。そこで19世紀、20世紀の東ヨーロッパ事情を少し調べてみました。私の暗い予感は的中したのです。
反ユダヤの傾向の強かった東ヨーロパではポーランド、ロシアのベラルーシ、ウクライナ、モルドヴァなどでユダヤ人殺戮が盛んに行われていたのです。これを「ポグロム」と言います。
日本が日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦とたて続けて国をあげて戦っていた間、東ヨーロッパではユダヤ人殺戮が横行していたのです。例えば、リトアニア公国の領域のベラルーシ、ウクライナ、モルドヴァでは農民一揆が起きるたびにユダヤ人が襲撃に会い、殺戮されるのが常でした。
そのようなユダヤ人迫害の地へドイツ軍が侵攻し、ユダヤ人を収容所へ集め出したのです。1939年のことです。ポーランド人がその政策を支持したのは自然の成り行きです。そして270万人が殺されました。ロシア(ベラルーシやウクライナ)在住のユダヤ人も220万人殺されました。そしてハンガリーからのユダヤ人は50万人です。短期間にこれだけの人々を検束し、アウシューヴィッツなどで処刑することは地元の住民の協力が絶対に必要です。
1795年に古いポーランドは近隣の列強に領土を分割され消滅します。そして前回に書きましたように123年後の1918年に新しいポーランド共和国が設立したのです。ポーランドという国が存在しなかった間も住民はユダヤ人を殺戮していたのです。
ドイツ軍がポーランドでユダヤ人を検束する時、彼らを匿って守ってくれたポーランド人は居なかったのでしょうか?オランダにはいました。「アンネの日記」がその証拠です。ポーランドでは「アンネの日記」は生まれなかったのです。
ポーランドは1939年に消滅し、1945年にソ連によって共産主義ポーランドになります。そして1989年には資本主義のポーランドになり現在に至っています。
このような悲劇の国のなかでユダヤ人迫害というもう一つの悲劇が二重に起きていたのです。
第二次大戦後、イスラエル国家が出来た時、ソ連や東ヨーロッパからの移住者が多かったのは、その地域の長年のユダヤ人迫害の歴史の産物なのです。
頭を垂れて深く考え、そして人間の罪深さに心が痛みます。
私は今までポーランド人は善で、ドイツとソ連が悪という視点で書き続けて来ました。そうでは無く人間は全て悪です。しかし少しの善を持っています。そう信じたいと思います。(続く)
今日も皆様のご健康と平和をお祈り致します。藤山杜人