福島原発の放射能で汚染された大量の水を止める対策が困難を極め、長期化する事が誰の目にも明らかになって来ました。
そもそもの原因は想定を越える大津波ですという説明がありました。冷却装置が流され、水素爆発が起き、放射能が空中へ飛散しました。従って福島原発の大きな事故は津波が原因であり、技術的な欠陥ではありませんという説明がありました。
しかし事故対策が長期化するに従って人々の心の中に現代の技術というものに基本的な疑問が広がるようになります。
現代の技術は高性能の工業製品を安価に作る事だけを重視して発展して来た歴史があります。その高性能の製品が故障したり壊れた場合の修理の技術は研究しません。壊れたら新しい製品を買い、古い故障したものは捨てるという思想が確立しています。修理の費用より新品を買ったほうが安いのです。
この悪しき思想にもとずいて建設され、発電を続けて来たのが福島原発なのです。
安く発電する為に津波対策施設への投資はしませんでした。発電効率の向上と定期検査で休む期間をなるべく短くして稼働率を上げる為の技術開発だけに努力して来ました。
何らかの原因で停電し、緊急用の発電も止まって冷却系統が停止した場合を想定して、その対策技術の研究をしていませんでした。全ての電源が何かの事故で停止するのは大津波だけが原因ではありません。いろいろな原因が想定されます。
原発工場に何台もの消防車を準備して置き、全ての電源が事故停止した時に消防自自動車のポンプで炉心の冷却水を循環する技術を無視していたのです。
発電効率を上げ、電圧、周波数が厳密に調整された高品質の電力を作ることに技術的な改良を加えることに夢中だったのです。
水素爆発を防止する技術は一切研究していません。建屋が壊れたとき空中へ飛散する放射能を最小にする技術を研究していません。
放射能で汚染された水が炉心の圧力容器や原子炉格納容器から漏れるのを防ぐ技術を研究していませんでした。汚染した水が炉心から流れ出した時、それを集めて地下に貯める技術が忘れられていました。ですからこそ敷地内のあちこちに沁み出して、始末の悪い状態が数ケ月、いや1年以上続き、海水汚染が続くのです。
現在の技術はお金儲けの出来る側面だけを研究し、開発し、製品が壊れたら捨てるという思想で出来あがっています。福島の原発も例外ではありません。
しかし原発が火力発電所と違います。何年間も放射能が飛散したり、海水を汚染するのです。この事実は事故対策が長期化すればすれほど人々の心に大きな影響を与えます。技術が中心の社会文化が変質する筈です。どのように変質するのでしょうか?そしてどのような文化を作ると日本はより幸多い国になるのでしょうか?
それはそれとして、今日も福島原発の復旧作業をしている全ての人々の安全をお祈り申し上げます。藤山杜人