今回の大地震と大津波の襲来で、日本民族は絶対に忘れられない歴史的な体験をしました。この体験は子々孫々、永久に伝承されると確信しています。
そして大地震の起きる原因や大津波襲来の経緯を深く理解しました。
その上、大地震や大津波は絶対に予測が出来ない事も理解しました。
さらに地質調査から大津波は500年から1000年に一回は必ず起きていた事も判りました。
予測は出来ないのですが、大地震と大津波は必ず起きます。その心の準備は完全に出来たのです。これこそが日本民族の非常に貴重な財産と信じています。
そこで以下に地震がどのようにして起き、それが何故予測出来ないかという明快な説明をもう一度掲載いたします。3月に掲載した2つの記事を繋ぎ合わせたものです。
それはそれとして、
今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。藤山杜人
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「何故、今日の大地震と大津波が起きたのでしょうか?」
地震は大陸の地殻(大陸プレート)の下に大洋の底の地殻(海底のプレート)がもぐりこんだために起きると分かっています。堅い海底の地殻が堅い大陸の地殻の下に滑り込むのですから界面はギザギザに割れ、ストレスがある部分に溜まります。それが大きくなり過ぎて突然破壊と断層滑りが地下深くで起きます。当然大きな揺れが起き、それが地表へ伝わって地震となります。そしてそれが海底で起きれば大津波が発生します。
原因がこれほどはっきり分かっているのに地震の予知は殆ど不可能です。大陸プレートと海底のプレートの界面は地下数十キロ以上と深いので局部的なストレスの溜まった場所を探すことが不可能なのです。下の写真の真ん中近辺に横長の四角を描いた所が3ケ所あります。そこが地震の発生源になり易い大陸プレートと海底プレートの境目です。素人の私が描き込んだので正確ではありませんが大体正しいと思います。
この3ケ所の四角形の下に線が引いてあります。この場所が地震発生場所と示す為の線です。日本列島に沿った海底です。
海底の地殻(海底プレート)がゆっくり動くのは地球の内部で熔けているマントルが流れ動いているからです。太平洋プレートは毎年10cm位西へ動くそうです。
下の写真は太平洋海底プレートとフィリッピン海プレートが西方向へ動いてユーラシア大陸プレートの下に潜りこんでい様子を示しています。潜り込むとき、海底が削り取られ日本列島が出来あがっている様子をご理解下さい。
今回、三陸沖で大きな地震があり、悲しい事態になりました。つくば市の地質標本館には日本列島の東側で太平洋海底プレートがユーラシア大陸プレートの下にもぐりこんでいる模型の展示があります。上の写真はその一部です。
今回の三陸沖の地すべりは一回だけでなく、近辺の福島沖や茨城沖のストレスの溜まった箇所へ刺激を与え、連続的に地下の地すべりが起きたようです。
地下の岩石が地割れして地すべりする現象は、「脆性破壊」というもので、予測が原則的に不可能です。ストレスが溜まった所は日本列島に沿って太平洋側の海底にあります。誰も何時、地すべりが起きるか予想がつかないのです。
上の説明では、地質学の専門用語を素人の私が分かり易い言葉に変えています。間違いもあると存じます。しかし専門家が、お許し下さいますようにお願い致します。
人間は莫大なお金を使って広い宇宙へロケットや宇宙船を飛ばせています。そんなお金があればもっと、もっと足元の地面の下を研究して地震災害の防止技術を確立したほうが良いと誰でも思います。しかしそれが出来ないのが人間の知恵では出来ない悲しいところです。
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「今回の巨大地震・大津波が何故予測出来なかった!!!」
3日前に、昨日の巨大連鎖型地震とそれによる大津波が予測出来ていたら人命の被害は非常に少なかった筈です。
地震学者は何をしていたのでしょう?手をこまねいて巨大地震の起きるのを待っていたのです。そして起きてから何故起きたかと賢そうに解説するのです。地震学者はけしからんと怒りたくなります。
地質学のことを考えない人々はこのような感想を持ってしまいます。不平がつのります。しかし、それは素人の考えであり、全く間違った非難です。
昨晩、何故、今日の大地震と大津波が起きたのでしょうか? という記事を掲載しまた。450件ほどのアクセスがありました。
昨日のこの記事で日本の地震は太平洋プレートかフィリッピン海プレートがロシア・中国大陸(ユーラシア)プレートの下へ滑り込んだ時に蓄積された巨大な地下内部応力の爆発的開放によって起きることを説明しました。
地下にある巨大な内部応力の蓄積場所は日本列島の下に連なっています。内部応力が次第に貯まって、周囲の岩盤が耐えきれなくなると大規模な岩盤の割れと再配列が起き、巨大地震になります。海底が盛り上がって津波が起きます。
一回岩盤滑りが起き、振動が発生すると周囲の内部応力の貯まった場所をゆすって、其処でも岩盤滑りが起きます。連鎖型地震とか余震はこうして起きるのです。
以前の阪神大震災は神戸の直下型大地震で、余震はありましたがフィリッピン海プレート前線へ刺激を与えませんでした。連鎖型でなかったのです。
今回は岩手・宮城沖から震源が次第に南に下がりながら大地震が起きています。
さて何故岩盤滑りと再配列が予測出来ないのでしょうか?
それは岩石の物理的な性質による宿命です。滑りと言っても、それは「脆性破壊」による岩石の破壊なのです。
話を分かり易くするために鉄棒を大きな力で引っ張った時、鉄棒が切れる現象を詳しく見てみます。引っ張る力を次第に大きくします。すると初めは鉄棒がゴム紐のように弾性伸びをします。もっと引っ張ると降伏点を越して、粘土が伸びるように塑性変形して細くなって行って、終いには切れてしまします。これは鉄が弾性変形し、終いには塑性変形する物理的な性質を持っているからです。
一方、岩石を棒状に削り、大きな力で引っ張って見ましょう。引っ張る力を次第に大きくして行きます。しかし岩石は弾性伸びをしません。塑性伸びもしません。そしてある力以上になるといきなり割れてしまいます。この現象を脆性割れと言います。
この脆性割れの本質は予測がつかない事です。岩石の内部に存在する小さな割れ目の大きさと分布状態によって割れが早く起きたり、遅く起きたりします。
脆性破壊をする物の身近な例は、ガラスや土器、陶器、瀬戸物などです。
内部に存在する細かな割れ目を内部マイクロ・クラックといいます。この内部マイクロ・クラックの分布状態は岩盤の生成の過程で出来、非常に複雑で、不均質なものなのです。
地震が岩盤の滑りと再配列で起きることは分かっています。しかしその原因が岩盤の脆性破壊である限り絶対に予測がつかないのです。ですから地震学者を非難する事は本質的に間違っているのです。(終り)