若い頃アメリカに留学して驚いた事が沢山ありました。
日本ではスポーツには毎日の訓練が重要ですと教わりました。
職人になるためには10年、20年の修業時代の「わざ」の訓練が無ければ一人前の職人になれないという話を聞いていました。訓練は体の動かし方の反復練習だけだと思ってアメリカへ留学しました。
ところが欧米では訓練とは知的な訓練も非常に重要視しているのです。
知的訓練にもいろいろ種類があって、科学的思考訓練、哲学的思考訓練、歴史的思考訓練、藝術観賞訓練などから宗教的訓練まで実に多種多様な知的訓練があるのです。
ケンタッキーフライドチキン店やマクドナルド店へ行くと店員の対応が機敏で優しくてとても良い感じをうけます。あれはアメリカ流の訓練方法の驚異的な成果なのです。
今回の「訓練の重要性」という連載記事では、硬軟両方をふくめた記事を何回かに分けて書き進めて行きたいと思います。
今日の第一回では歴史的思考訓練の方法を少しご説明いたします。すると、趣味の世界が急に広がる話をご紹介いたします。
訓練方法は歴史的なことが書いてある本を多数読むことから始めます。
そのとき重要な事が一つあります。ただ漫然と興味本位に読み飛ばすのではなく、自分で問題や疑問を持って読むのです。ここに書いてある歴史は真実か?何故こんな事が起きたのか?歴史は書く人の立場によってが逆の書き方がなるのではないか?書いた人を美化しすぎていないか?他の文書にも同じことが書いてあるか?
こんな問題意識を持って本を読むことが歴史的思考訓練なのです。問題意識を持って読めば、自然に自分の歴史解釈が生まれて来ます。そうすればそれが正しいか否かを調べはじめます。そこまで進めばそれは立派な、そして愉快な趣味へとなります。
実例として、ささやかな私の歴史趣味をご紹介します。
何年も前に埼玉県の秩父へドライブへ行ったことがあります。道に迷って日高市の郊外をウロウロしていたら下のような異国的な魔除けの2本の門柱を偶然見つけました。
歴史的思考訓練のお陰で、ピンと来ました。ウン、これは昔の朝鮮と交流があったと感じました。日をあらためて再度、調査の為に訪問しました。
朝鮮半島の高句麗が新羅と唐によって滅ぼされたとき日本へ亡命したきた王族と家来たちが埼玉県西部に住みついたのです。勝手に住みつく訳には行きませんから当時の天皇から「高麗王」という称号を貰って武蔵国の領地を分譲してもらい移住したのです。
下の写真が示すように、その「高麗王」の廟所が現在でも存在しています。
その歴史的いきさつは下の写真にある看板に書いてあります。
これが歴史趣味の実例です。しかし、この趣味の面白さはその先にあります。自分で見つけた説明は本当に正しいのでしょうか?そして自分でいろいろな仮説を立てて楽しむ事にあります。当時の天皇から立派な称号や領地を貰うために何をしたのでしょうか?持参した金銀や宝石を出したのでしょうか?それだけでは充分ではない筈です。もっと重要なおみやげは「先進的な農業技術」や「金属の精錬技術」の提供だったと想像しています。高句麗王の家来の中に優れた農業や工業の技術者が居たようです。
この仮説の説明をクダクダ書いていると長くなりますので止めます。
しかし素人の歴史趣味というもの一つの例をご理解頂ければ嬉しく思います。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
藤山杜人