私は、コンビニ店やファミリーレストランの接客態度に感動し、涙がながれそうになることが時々起きます。老人の感傷でしょうか。
理由を書くまえに、まず老人の昔話を読んで下さい。昔話といっても、1970年頃より前のことです。日本が高度成長を始める前のレストランや店の接客態度の悪さのことです。
その接客態度は悪いだけなら耐えられますが、お客を差別したのです。立派な洋服を着たお客にはへつらいます。ハンサムな男性や美人のお客にはニコニコして愛想を良くします。旅館へ行って、玄関で宿泊を申し込むと、女将が疑い深い、いやな顔をして私の足元を見ます。立派な靴を履いていたら、部屋は一応空いてはいますがと半分承諾してくれます。古靴を履いていたら満室ですとニベも無く断られます。
レストランでも見かけの良いお客へは女給が何度も近付いてサービスをします。金持なら小銭をポチ袋に入れてそっと渡してくれます。旅館でも心ヅケを多くくれそうなお客へサービスを良くします。
私はいつも貧乏そうにしていましたし、見かけも悪い男だったので何度も、何度も、そして何度も悔しい思いをしました。悲しい思いをしました。この書き方のクドさで私の恨み、つらみの深さがお分かり頂けると思います。
これこそが古い日本の文化だったのです。
それがケンタッキーやマクドナルドなどが日本へ上陸してから一挙に変わってしまったのです。アメリカの店では接客態度をマニュアルに従って徹底的に訓練します。その訓練を終了しないと働けないのです。訓練を重要視するアメリカ文化の特徴です。
さらにアメリカ流の接客訓練をしたコンビニが津々浦々に出来ると、日本の店の接客態度もガラリと変化したのです。
皆一様に親切に明るくなり、お客の見かけによって差別しないようになったのです。微塵の差別も感じられません。老人になって、その上、店の中を見るだけで出てしまっても、ニコニコしながら丁寧に送り出してくれるのです。昔はチェッとか聞えよがしに舌打ちして送りだされた事も時々ありました。舌打ちしない場合でも露骨に嫌な顔をされたものです。
ここまで書けば、何故私がコンビニ店やファミリーレストランの接客態度に感動し、涙がながれそうになるかが充分ご理解いただけたと思います。涙を流すは大げさですが、ああ日本も本当に平等な良い邦になったものだと深い喜びに満たされます。
もう止めます。気晴らしに写真を2枚。上の写真は箱根にあるオリエント急行のラウンジで出されるコーヒーセットです。その品質が良いのには感動しませんでしたが運んで来たボーイさんのサービス態度に感心しました。
下の写真は箱根の「山のホテル」の喫茶室です。ピアノなんか置いてある高級な所です。昔は私のような人物は敬遠されそうな場所でした。最近はサービスに差別が無い上、お客も平等に寛いでいます。その光景が私にとっては感動的だったので写真を一枚撮りました。ああ、日本は本当に良い国になりました。
それはそれとして、今日も皆様のご健康と平和をお祈り申し上げます。
藤山杜人