おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

「草迷宮」(古きよき映画シリーズその24)

2013-02-15 23:42:25 | 素晴らしき映画
 亡き寺山修司の監督作品。「演劇実験室・天井桟敷」の雰囲気が懐かしく、異才の作品を再び。泉鏡花の「草迷宮」が原作。

《あらすじ》
 明は、死んだ母親の口ずさんでいた手毬唄の歌詞を知りたくて旅をしている。彼は校長や僧を訪ねるが、満足な答えを得ることが出来ない。手毬歌と関わって想い出すのは死んだ母親との生活。
 紅い帯に導かれるように裏の土蔵に近づいた明。そこには、千代女という淫乱な狂女がいて、少年の明を誘惑する。

母に知られ、母親に木に縛られてひどく叱られ、母は、二度と近づかないよう手毬歌の呪文を体中に書く。

 ある日、明は美しい手毬少女の後を追いかけているうちに、たくさんの妖怪が棲みつく屋敷に入り込んでしまう。大小の手毬が飛びかう中、妖怪達の挑発、格闘、・・・。

生首だけの母を前にした女相撲の土俵入り。
 いつか対岸にいる母親(幻想)に近づこうとして川でおぼれかけた少年明の葬いの場面に変わるが、それは、夢だった。

しかし、どこまでが夢でどこまでが過去で、どこが現在なのか(あるいは未来なのか)判然としないまま。
 こうしてまた、明は手毬歌の歌詞を探し求める旅を続けざるをえない。それは今や生死すらはっきりしない美しく妖艶な母の姿を求める旅でもあるのか。

 夢か現かの境を行き交う明。三役を演じる伊丹十三がおもしろい。

 1979年、フランスのプロデューサー、ピエール・ブロンベルジュが制作したオムニバス映画「プライベート・コレクション 」中の一編として2つのエピソード作品と共にパリ市内約30の映画館で上映された。日本では寺山修司が亡くなった1983(昭和58)年年に、寺山修司追悼特集として公開された。

《スタッフ》
企画・制作:ピエール・ブロンベルジュ
原作:泉鏡花「草迷宮」より
脚本:寺山修司、岸田理生
監督:寺山修司
撮影:鈴木達夫
音楽:J・A・シーザー
美術:山田勇男
協力:演劇実験室・天井桟敷、劇団ひまわり、漆原辰雄、植村良己

《キャスト》
三上博史 … 明(少年時代)
若松武 … 明(青年時代)
新高恵子 … 母親
中筋康美 … 千代女
福家美峰 … 美登利
伊丹十三 … 老人 / 僧 / 校長 (三役)

 海岸の砂丘、川の流れ、古い屋敷、土蔵、・・・、ありふれた風景の中に潜む(誘う)迷宮の存在、映像的なおもしろさがあります。妖怪屋敷の場面は、天井桟敷の舞台を彷彿とさせ、テント小屋で何度も観た、あのおどろおどろしさ、不思議な魅力が再び。天井桟敷が懐かしい。
 出演者もそれぞれ、懐かしい。特に音楽を担当したJ・A・シーザーさん。「演劇実験室・天井桟敷」に入団して、音楽と演出を担当。1983年には、自ら「演劇実験室◎万有引力」を結成。そこでの芝居を何度か観たことがあります。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする