おやじのつぶやき

おやじの日々の暮らしぶりや世の中の見聞きしたことへの思い

読書「廃墟大全」(谷川渥編)中公文庫

2013-03-15 21:53:42 | 歴史・痕跡
 2年前の3月11日。大災害によって廃墟と化した街並み。整然と片付けられた地域は、一部を除いてその災害の痕跡は失われつつある。しかし、福島原発事故によって無人化し、直前までの生活の匂いがそのままに、突然、人の気配が全く途絶え、廃墟の街になったフクシマの映像や写真が流される。
 これまでの長い人類の栄枯盛衰という歴史の中、際限なく繰り返される栄光、繁栄、一方で戦争や災害、征服、絶滅、破壊などによって、世界中に廃墟が(今もなお)再生産されていく。生と死。いわば死の遺産でもある「廃墟」。それを見る人に触れる人に、郷愁や無常観を誘う、意識的な存在として風化することを拒絶してそこに(その下に)「ある」。
 映画、写真、建築、美術、文学などに登場する無数の廃墟群を16人の気鋭の研究者が徹底検証した書。1997年に発刊された『廃墟大全』を2003年に文庫化するに当たって一部、加筆・修正して再構成された。
 かなり刺激的な内容。「時空を超えて怪しい魅力を放って已まない廃墟の本質に迫った」(後書き)異色の評論集。写真家や画家の個人的な廃墟に対する思惑・思念がけっして個に止まらず、時代や民族や文化に色濃く反映され(影響され)ていることを明らかにしていく。中国のとらえ方。ローマでは。そして日本では・・・。民族の自然観、死生観にも考察が進んでいく。廃墟の持つ本質を鋭く捉えた書としてはジャンルを超えた「問題提起」「論戦」の場として、格別の出来合い。
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