池波正太郎の「むかしの味」というエッセイ集を再読しました。長野県上田市の蕎麦屋「刀屋」の章に、『刀屋へ入って、たとえば、鶏とネギを煮合わせた鉢や、チラシとよぶ天麩羅などで先ず酒を飲む。』と記されています。刀屋へ行ってお酒を飲みたくなりました。「酒のめ、のめ」という曲が収録されたアルバム。
秋吉敏子 (TOSHIKO AKIYOSHI)
TOSHIKO AT TOP OF THE GATE (Columbia takt 1968年録音)
秋吉敏子(p, 1929年生)さんについては、1970年代にはルー・タバキンとのビッグバンドで活動し来日公演を行うなど、バンドリーダー、作編曲家としての活躍が目立ち、僕はそういうミュージシャンだと思い込んでいました。しかし、1950~60年代はコンボを率いてよい演奏を残しており、これもその一枚です。
メンバーが素晴らしくて、ちょっと驚きます。秋吉敏子(p, arr)、ケニー・ドーハム(tp)、ルー・タバキン(ts, fl)、ロン・カーター(b)、ミッキー・ロッカー(ds)。ケニー・ドーハムが参加しているのが、僕には嬉しいところ。ニューヨークのジャズクラブ「Top of The Gate」におけるライブ録音。
曲は次のとおり。
1 Opus No. ZERO (Toshiko Akiyoshi)
2 The Firstnight (Toshiko Akiyoshi)
3 Phrygian Waterfall (Toshiko Akiyoshi)
4 Let's Roll In Sake (Toshiko AKiyoshi)
5 How Insensitive (A. C. Jobin)
6 Morning of The Carnival (Louis Banfa)
7 The Night Song (L. Adams, C. Strousse)
8 Willow Weep For Me (Ann Ronell)
9 My Elegy (Toshiko Akiyoshi)
Toshiko Akiyoshi(秋吉敏子)作が5曲、あとの4曲はスタンダード曲です。「Let's Roll In Sake」は、訳すと『酒のめ、のめ』だそうです。
秋吉敏子さんが、作編曲とピアノ演奏に実力を示したアルバム。このライブのために作曲された「Opus No. Zero」をはじめ秋吉作の5曲は、メロディやリズムが印象的なものばかりです。「Let's Roll In Sake」は、いわゆるジャズロックのリズムを使っていますが、日本的なメロディーも流れ、彼女のアイデンティティが少しうかがわれます。アップテンポの「My Elegy」では全員の熱いソロが聴け、ケニー・ドーハム(tp)は、「Morning of The Carnival」(黒いオルフェのテーマ)でフューチャーされています。ジャケットのイラストは、和田誠さんによるものです。
【池波正太郎著「むかしの味」(新潮文庫)】
表紙。
刀屋の写真。
刀屋の章のはじめのページ。池波さんが上田を訪れるようになったきっかけは、真田家を題材にした小説を執筆するために、真田家のことを調べるためでした。
池波正太郎作の蕎麦屋のイラスト。左に配したのは、仕掛人の藤枝梅安でしょう。
「刀屋」には、2018年7月に訪れて、拙ブログで記事にしました。その記事へのリンクはこちら。その時はお昼だったので、今度は夕方あたり訪れたい。