ゴールデンウィークに書店で手に取った池波正太郎作「仕掛人・藤枝梅安」の第一巻「殺しの四人」が面白く、続けて全七冊を読みました。このシリーズは、依頼を受け報酬を得て人を暗殺する仕掛人(殺し屋)と江戸の裏社会を描いたものです。
登場人物や暗殺方法など、著者の創作によるものですが、現実味があって、実際にあった話だと言われても不思議ではありません。場面転換が早く、物語がスリリングに進みます。一方、藤枝梅安らの日常生活も描かれていて、ホッとした気分にさせたり、物語に深みを与えている点も見事です。
最終作の「梅安冬時雨」には、池波さんへのインタビューが収録されていますが、江戸の街並みや暮らしのことを、あたかも自らがそこに住んで生活しているかのように語っていて、その膨大で深い知識や想像力が面白い小説を生む源泉だとあらためて気づかされました。
舞台は、江戸時代の安永から文化(1777年~1806年)にかけての30年間です。
第三巻「梅安最合傘」の中の「殺気」は、暗殺は行われていませんが、梅安の凄みが出ていて印象深い一編です。
第五巻は長編で、大坂の元締め(依頼を受けて、暗殺者を手配する人)と梅安との抗争を描いていて、映画のギャング同士の抗争物のような雰囲気も出ています。
著者急逝により、未完となった梅安シリーズの最終作。新たな人物も登場し、面白くなりそうなところで、終わります。「梅安余話」と題して、池波正太郎さんへのインタビューも収録されています。
第七巻に掲載された写真「池波正太郎・梅安の旅」から。
妻籠宿を歩いているところです。
湯河原の宿で、インタビューに応える筆者。