山田洋次『東京家族』にガックリ(上)――致命的な演出力の弱さ
ようやく時間ができたので、評判の「東京家族」を観た。だが、感想は「ガッカリ」である。藤崎康さんのように、「演出力の弱さ」を指摘する人もいるが、私は、「ストーリーの弱さ」が致命的だと思う。
特にひどいのは、原作では、次男は戦死しており、その妻(原節子)は、これからも独り身を貫くのかどうかで揺れているところだったのが改変され、次男(妻夫木聡)は死んでおらず、その婚約者(蒼井優)と幸せな生活を送ることが示され、「家族の絆」が強調されているところ。しかも、次男と婚約者とは、震災でボランティア活動を行っていた際に知り合ったという、取ってつけたような設定である。
原作の原節子は、「自分の生活」に没頭する実の子供たちと対比される、これから「自分の生活」をどうしていくのかという課題を抱えている人物という役どころだったのだが、それが「東京家族」では台なしにされている。孤独であるが故に義理の両親に優しく接する原節子の神々しさが、ここには微塵もない。
ようやく時間ができたので、評判の「東京家族」を観た。だが、感想は「ガッカリ」である。藤崎康さんのように、「演出力の弱さ」を指摘する人もいるが、私は、「ストーリーの弱さ」が致命的だと思う。
特にひどいのは、原作では、次男は戦死しており、その妻(原節子)は、これからも独り身を貫くのかどうかで揺れているところだったのが改変され、次男(妻夫木聡)は死んでおらず、その婚約者(蒼井優)と幸せな生活を送ることが示され、「家族の絆」が強調されているところ。しかも、次男と婚約者とは、震災でボランティア活動を行っていた際に知り合ったという、取ってつけたような設定である。
原作の原節子は、「自分の生活」に没頭する実の子供たちと対比される、これから「自分の生活」をどうしていくのかという課題を抱えている人物という役どころだったのだが、それが「東京家族」では台なしにされている。孤独であるが故に義理の両親に優しく接する原節子の神々しさが、ここには微塵もない。