ダンスマガジン2023年8月号(三浦雅士さんによる菅井円加さんへのインタビュー)p44~50
三浦「知人からの情報ですが、一幕が終わった後の女子トイレで、「部活のころを思い出して、胸が詰まったわ」といった会話が聞かれたとのこと。ニンフたちのなかのシルヴィアの役柄をとてもよく理解した、とても鋭い指摘だと感心しました。教師や部長に可愛がられる子は絶対妬まれる。そういう子の特徴がよく出ていた。」
・・・
菅井「私はコンクールが嫌いだったんですよ、海外のコンクールはさらに大規模だというイメージもあって」
三浦「知り合いが大勢いたとおっしゃったけれど、コンクールに出れば出るほど嫌いになった?」
菅井「会場の雰囲気から何もかも。私はバレエを楽しんで踊りたかったから。コンクールで友だちができることは嬉しいんですけれど、激しく競い合わないといけない。それがすごく嫌いで、「なぜ順位をつけるんだろう?」「なぜこんな辛い思いをして踊らなきゃいけないんだろう?」と思っていました」
「シルヴィア」1幕では、ディアナ(部長)のもと集団(部活)で狩り(部活動)に励む少女たちの情景が出て来る。
シルヴィアはディアナの寵愛を受ける優等生であり、”男子禁制”の集団なので、アミンタと交流することも許されない(主体と客体の間)。
この状況が、東京文化会館の女子トイレ室では「部活」と形容されていた。
この会話を、三浦さんの知人である女性が聞いていて、三浦さんに伝えたのである。
まさに「トイレに耳あり」である。
今では三人とも別々の方向に進んでしまったが、この3人の中で最も「身体性」に関心が強いのは三浦さんだろう。
そして、彼は東京文化会館をホームグラウンドとして、今やその隅々まで支配しているかのようだ。
それにしても、ローザンヌ国際バレエコンクールで1位に入賞した菅井さんが、「コンクールが嫌いだった」というのは意外だった。
だが、彼女の常にリラックスした、(有吉京子先生いわく)「自分自身に対する信頼」に満ちた立ち居振る舞いは、「コンクール三昧」の過去を克服した結果生まれたものかもしれない。