Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

安楽椅子派の聖地巡礼(7)

2023年11月01日 06時30分00秒 | Weblog
② 舶来用品店「レックス」
 「舶来洋品店レックスは、元町でも名高い老舗で、良人の死後は房子が取りしきつてゐる。その小体なスペイン風の二階建てはよく目立ち、厚い白壁には西洋花頭窓を穿つて、地味で趣味のいいディスプレイをしてゐる。 (「全集9」p244)

 「レックス」は、一応”聖地”ではあるものの、主に登の母=黒田房子の経済生活や世間一般との関わり、三島の言葉で言えば「ブウルジョアの醜悪さ」(「全集9」p632)を描くための舞台となっている。
 「レックス」のモデルは、「ザ ポピー」(横浜市中区元町2丁目86番地)である。
 1冊目の「創作ノート」では、三島が川島勝さんらと「ザ・ポピー」を取材した際のメモが結構な分量にのぼっており(「全集9」p638~643)、2冊目に入ると、「女は元町のpoppyの如き高級洋品店のマダム」(同p651)と明確に房子の人物像が出来上がっている。
 この流れからすると、当初は房子=「母親」という漠然とした設定だったのが、取材を経て、「高級洋品店の女主人」へと具体化していったことが推測出来る。
 もっとも、山手町に豪邸を持ち、かつ元町に立派な店舗を構える人物は、どう見ても大富豪である(地元民からすればちとリアリティに欠けるかもしれない。)。
 どうりで、房子は、結婚式の媒酌人を横浜市長(昭和37年当時は半井清)に頼めるわけだ。
(ちなみに、房子は、テニス・スクールに通って熱心に練習しているのでプロポーションを保っていることになっているが、このテニス・スクールは、「横浜インターナショナルテニスコミュニティ」(YITC)らしい。)。
 さて、昭和37年当時は二階建てだった「ザ ポピー」だが、現在はどうだろうか?
 「安楽椅子」から調べた限りでは、「スパニッシュ様式の重厚な店構え 」らしいが、代表取締役によれば「実はこのお店は1980年代に立て替えたものなんですよ」とのこと(横浜元町商店街で“エモい”洋品店「ザ・ポピー」を探る【三島由紀夫、高倉健も御用達】)。
 現在では五階建てのこの建物だが、昭和37年当時の店舗は二階建てであり、現在より小さめだったようだ。
 ともあれ、「レックス」は、「黒田邸」に比べれば、当時の状態がまだ部分的には残っていると言えるだろう。

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