① 藤井「悪手を指したと思ったら、完全に切り替えるというのは、やっぱりなかなか難しいなと感じます。悪手には対局中に気づくものと、対局後に振り返って気づくものの二つがあるんですが、自分の場合、対局中に気づいた時はやっぱり精神的にかなり落ち込みます。でも対局中に以前の局面を考えるというのはマイナスにしかならないので、ぱっと切り替えて、今の局面における最善手を探すようにしています。」(p120)
② 藤井「勝った将棋に関しては、それはもう過去のことなので。それを振り返るというよりは、やはり負けた将棋から反省点を抽出して、次につなげることのほうが大事なのかなと思います。」(p100)
藤井聡太氏が語る「失敗」(=悪手)への対処法。
上で引用した2つの文章は、一見すると矛盾しているようにも思えるが、そうではない。
①は、「失敗」は「振り返らない」、つまり、「後悔」も「反省」もしないというもので、西郷隆盛の遺訓と同じである(過ちへの対処法)。
ここで注意すべきは、藤井氏が述べているのは、「同じ一つの対局の中における『失敗』への対処法」である点である。
要するに、1つの連続した出来事の中で、失敗した場合にどうすべきかという問題なのである。
②は、「失敗」を「振り返る」、そしてそこから将来につながる材料を探し出すということであり、「反省」をするというもの。
但し、「後悔」をするのではない。
①と異なるのは、「将来における対局にどう備えるか?」という観点からの対処法である点である。
なので、人生で言うと、最初の就職や結婚で失敗した人にとっての「転職先ではどうすべきか?」、「再婚相手にどう接していくべきか?」という問題に似ているように思う。
いずれにせよ、将棋も人生も、「後悔」は全くの無駄であるという点は動かないようだ。
・・・むむむ、将棋って、人生にも役立つんだよなあ!