Don't Kill the Earth

地球環境を愛する平凡な一市民が、つれづれなるままに環境問題や日常生活のあれやこれやを綴ったブログです

10月のポトラッチ・カウント(8)

2024年10月31日 06時30分00秒 | Weblog
第2場 人間界の染色工場 (遺伝子操作研究所)
 研究所の所長バラクは、名もない孤児を買い、無給で家の掃除をして料理を作り、子どもを産むため、妻として研究所に連れてきた。彼女は反抗的で義務を果たすことを拒み、バラクの3人の兄弟からいびられているが、彼はいつか二人が幸せな夫婦になれると確信している。
 不幸なバラクの妻は、皇后と乳母にとって、子を産む能力や赤ん坊、すなわち自分の影を売ってくれるいいカモに見えた。乳母は、子産み機として強いられるのを拒む妻を励まし、妊娠によって美しさを損なってしまうと警告する。だが魔法で主治医のような人物を出現させることや富の約束も、疑り深いバラクの妻を説得することはできない。
 夫のバラクは、女たちの間で何が起こっているのか知らず、客たちと研究所のメンバー全員を招いて、無礼講なパーティーを開く。
(第3場 省略)
第4場 人間界の染色工場 (遺伝子操作研究所)
 バラクの妻は皇帝により影を得た(身籠った)後、皇帝とともに研究所を去る。皇后はそれに倣った結果、バラクから影をもらう(子を身籠る)。しかし自分の罪の意識に気づき独断で幕を閉じることにより、本公演の第1部が終わる。

 ホフマンスタールはシュトラウスの手紙で、
 「重要なのは皇后だ
と指摘している(公演パンフレットp25)。
 だが、それに劣らず重要なのは、もともと孤児であったところをバラクに拾われたバラクの妻だろう。
 第4場のあらすじに、「皇后は・・・バラクから影をもらう(子を身籠る)」とある。
 霊界の存在である皇后が身籠ることはあり得ないから、これは奇蹟というほかない出来事である。
 奇蹟を生んだのはもちろん皇后自身だが、それに先行してバラクの妻が身籠ったからこそ、この奇蹟が生まれたのである。

エピローグ 第5場 中間世界の地下室 (心理療法の治療)
 バラク夫婦と皇后は、自分たちの体験と心理的に折り合いをつけようと懸命に努力する。にもかかわらず、乳母(セラピスト)は患者の気持ちを静めることができず、カイコバートの伝令使(役人)に追い出されてしまう。
 皇帝はすでに心の中で石になってしまったように感じた。思いがけず、皇后は赤ん坊を出産する。
 
 第6場 別の場所、別の時におけるエピローグ (高級レストラン)
 それから少し経っても、5人の主人公はまだ平和を見つけられずにいる。昔からの争いが再び勃発し、夫婦間の衝突はさらにエスカレートする。乳母は、古い童謡にあるように、すべての不可解な出来事には「超自然的な力が働く」という言葉で締めくくる。
 
 ここが原作を大きく改変したところである。
 原作はどうなっていたかというと、
 「・・・なんとか子どもを手に入れようと、皇后は自分の見張り役でもある乳母とともに人間の世界へ向った。見つけたのは染物屋バラクとその妻だ。浪費家で男好きの妻は「影」を売ってもいいと思っている。交渉は成功したものの、妻の不実にバラクは怒り、怒る夫の姿にバラクの妻は改めて愛を感じるようになる。それを見て皇后もためらう。石になろうとする夫の前で皇后が影をあきらめた時、奇跡が起った。皇后は元の姿に戻った皇帝と抱き合いバラクと影を取り戻した妻も夫との絆を確認した。生まれていない子どもたちの声が聞こえる。」(前掲p25)。

 この「子どもは生まれない」ハッピー・エンドの筋書きを、コンヴィチュニーは、「子どもは生まれる」ものの、これ以上はないといって良いくらいのバッド・エンドに変えてしまった!
 何と、皇帝とバラクは、皇后とバラクの妻を拳銃で打ち殺し、皇帝は赤ん坊を連れて車いすで逃げ去るのである(遠方の席から観ていたので見間違えがあったらごめんなさい。)。
 さあ、東京文化会館のお客さんの反応はいかに?

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 10月のポトラッチ・カウン... | トップ | 10月のポトラッチ・カウン... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

Weblog」カテゴリの最新記事