「第1場 霊界の皇帝の宮殿(地下駐車場)
1年前、「皇帝」と呼ばれるマフィア組織のボスは、狩猟中に白いカモシカの姿で現れた敵対する 「霊界の王」カイコバートの娘に恋をし、親しい「鷹」の助けを借りて彼女を捕らえた。しかし、皇帝は感謝するどころか、狩りの仲間であった鷹が、新たに選んだいわゆる 「皇后」を捕獲した際に、彼女の額に血まみれの傷を負わせたことに腹を立て、鷹を追い払ってしまう。
カイコバートの娘は皇帝のもとで外界と接することなく暮らしており、彼女の乳母だけが付き添っている。皇帝はこれまで夜毎に皇后の寝室を訪れたが、12ヶ月経っても后は影を持たない。それは后が子を宿していないことを意味する。娘をかどわかされた権力者の父カイコバートは激怒し、娘が影を得なければ皇帝を「石」(コンクリート詰め)にすると脅し、毎月使者を乳母に送った。12番目の使者は圧力を強める。乳母は皇后に、皇帝を死から救う期限があと3日に迫っていることを伝えなければならない。皇后は皇帝を救うために、乳母と一緒に全く未知の人間界へ胎児を求めに行く。」
カイコバートの娘は皇帝のもとで外界と接することなく暮らしており、彼女の乳母だけが付き添っている。皇帝はこれまで夜毎に皇后の寝室を訪れたが、12ヶ月経っても后は影を持たない。それは后が子を宿していないことを意味する。娘をかどわかされた権力者の父カイコバートは激怒し、娘が影を得なければ皇帝を「石」(コンクリート詰め)にすると脅し、毎月使者を乳母に送った。12番目の使者は圧力を強める。乳母は皇后に、皇帝を死から救う期限があと3日に迫っていることを伝えなければならない。皇后は皇帝を救うために、乳母と一緒に全く未知の人間界へ胎児を求めに行く。」
ホフマンスタール&R.シュトラウスの”黄金コンビ”による難解なオペラ作品。
クラウドファンディングに参加した私はお礼としてチケットをもらったのだが、最上階(5階)の右端の席で、オペラグラスは必須であるにもかかわらず持って来るのを忘れてしまった。
なので、舞台上の細かいところは見えず、主に音楽に集中することにした。
フロイト先生を崇拝していたホフマンスタールのことゆえ、もちろんストーリーは緻密に組み立ててあるのだが、やはり難解すぎる。
ストーリーの難解さに加え、”影”=胎児という設定が今日のポリコレ基準には適合しないためか、上演機会は極めて少ないそうである。
さて、演出のP.コンヴィチュニーは、原作のうち終幕(第2幕)を大きく改変したことを宣言しているが、第1幕は一応原作を踏襲しているのではないかと推測する。
とはいえ、第1幕の第1場からして理解不能に近い。
「皇帝」は、カイコバートの娘(=「皇后」)を霊界から誘拐した代償として、カイコバートから、
「娘が影を得なければ皇帝を「石」(コンクリート詰め)にする」
という脅迫を受ける。
これは、”返礼する義務”を強制するものであり、変形ポトラッチと見て良いと思う。
もっとも、「皇后」は霊界の出身なので、人間の胎児を宿すはずがない。
そこで、彼女と乳母は、胎児を求めて人間界へと旅立つ。
この設定は、バレエ(だいたい2幕)でよく出て来る、「現世の人間が『異界』に迷い込む」という筋書き(ジゼル、くるみわり人形など)とは正反対であり、私も初めて観た。
ちなみに、本作では廻り舞台を使用しており、第1場=地下駐車場の反対側は第2場=遺伝子操作研究所となっている。