ペレンデールのグレー・グラデーション、全部紡ぎ終わりました。
最後のグループは「チャコールグレー」、殆ど黒です。
つややかで繊細な糸に仕上がりました。
この一包みのフリースでずいぶんと楽しみました。
出来た毛糸は300g弱。甥っ子のベストが編めないかと考えています。
買った時に包んであった布で紡いだ糸を包む。
この包みの中身は買ったときと同じウール100%。(ちょっとゴミや脂が減っているけれど)
物質的に分析したら、成分はなんら変わらない。
でも洗って、ほぐして、梳いて、紡いだこの中身は
以前の姿とは全然違う。もっとポテンシャルの高い物だ。
そこに加わっているのは…。なんて言ったらいいんだろう。
手仕事エネルギーか。(熱エネルギーとか光エネルギーとか、化学エネルギーとかと同じように。)
それは、お茶碗のご飯とおにぎりの持っているエネルギーの違いをもっと大きくしたような物。(おにぎりの方が元気が出ると思いませんか?)
これはまだ材料なので、これを加工する事でまだエネルギーは加わる。
学生の時、目黒の美術館でグスタフ・クリムトの作品展を観た。
素描の前で息を呑んだ。ベートーベン・フリーズの下描き。
一枚の紙と黒炭。
そこから受け取るエネルギーの大きさ、強さ、生命力の強さに。
黒炭の粒子が人の手によって薄く、濃く紙の上に置かれているだけなのにこれは紙と黒炭以上の大きな何かの力がある、と感じた。
土くれから動物や人間を作ったのは神。
人間は神の似姿としてそれに準ずる行為が出来るのだとその時知った。
手仕事はクリムトの仕事(芸術)よりはもっと地面に近い。
生活に近い。
でもこれも、人間として生まれて生きているからこそ出来る業。
限りなく無に近いものから無限に近いものを作り出す力。
これを鍛えるのはすばらしいことだと思う。
私にとって手仕事・芸術は、楽しみ、瞑想、修行そのどれもである。