明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



今回はいつも連れて来ている母がホームにおり、当分出歩くのは無理なので内緒である。母は元々新聞を見て予約し、宏美さんのコンサートに一人で出かけていた。それにしても毎回感心するのは変わらぬ歌声である。維持するのは並大抵ではないだろう。先日ユーチューブで昔の懐かしの歌謡番組を観たら、ベテランの中で十代の宏美さんが一番上手かった。デビュー時のレベルの高さのせいで、未だに変わらぬように聴こえるのであろう。 ところで私にトラウマがあるとしたら幼稚園で木馬座を観に行き、終演後、舞台から降りて来た着ぐるみの狼君に私は頭を撫でられ狼君と母が慌てるくらい大泣きしたそうである。そのせいで寺山修司の舞台など見向きもせず、浅草の演芸場やソウルショーでも縁者が舞台から降りて来て話しかけられるのに恐れを感じてしまうのである。TVから貞子が這い出して来るなどもっての他である。ところが本日、宏美さんがマイクを持って客席に降りて来た。貞子でなく岩崎宏美だというのに私の胃袋はフリッツ・フォン・エリックに鷲掴みにされたが如し。それは宏美さんが無事舞台に戻るまで続いた。そういえば、その前は、ご主人の今拓哉さんの芝居を観にいった時。侍姿の今さんが客席に降りて来て慌てたが、その時は客がいない体の設定であったので事なきを得た。 それが終演後、別の通路から宏美さんがファンと言葉を交わしたり記念写真を撮ったり、それはまったく大違いで、宏美さんには母へ気遣いの言葉までいただいてしまった。トラウマとはかくの如きものなのである。

みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー (出品写真作品)三遊亭圓朝×3/泉鏡花/三島由紀夫/夏目漱石/永井荷風
※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。


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