明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



夏目漱石を無地の背景に座らせた。羽織の色がどうも気に食わない。段々濃くしていったら結局黒紋付が一番格好が良い、ということになってしまいそうである。13日からの丸善の人形展に、新たな手法の第一作、三遊亭円朝のポートレイトを青木画廊、深川江戸資料館に続いて出品の予定だが、これがすでに黒紋付である。漱石の家紋は菊に井桁で、それが喜久井町の町名の元になった、と漱石が書いていた気がする。しかしネットで検索してみたら、漱石の勘違いで、形が違う、なんて文章を見てしまうともう心配になる。ただでさえ座布団に着物が3人になってしまうので、漱石は紋なしの濃紺の羽織にすることにした。 漱石にまとわせようという猫の件は、私の悪い癖で、最初に頭に浮かんだのは、仏頂面の漱石の膝の上やら肩やら、そこら中猫にすり寄られている場面であった。面白いと思ったが、例によってやり過ぎである。漱石を座らせてみると、ただ膝の上に一匹で充分ではないか。となれば、飼い主に猫をまとわせておいて撮影し、それを漱石に合成する必要もなくなり、人に慣れない猫だろうと問題がないことになる。明日夕方、マタタビを用意して待っていていただけるそうである。



※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )