明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



30日から始まるつげ義春トリビュート展だが、いつもなら近所の方々にも知らせるのだが、今回は写真1点だし、つげ義春を知らない人にとってはどういう場面か判らないし積極的にはお知らせしにくい。電話でそんな話を友人としていたら「お前の作品はみんなそうじゃねえか」。彼は時たま意味の良く判らないことを口にする。 『ゲンセンカン主人』。寂れた温泉宿を訪れた男。風呂に入ろうとして混浴を嫌う。しかし下働きの老婆に「早くはいってくれないと、わたしら寝ることもできませんがね。」入ると聾唖の宿のおかみが、湯船の脇に備えられた祭壇に向かって一心に拝んでいる。欲情した男は突然遅いかかかる。抵抗するおかみ。男は押さえつけながら手で、あるサインをしておかみに示す。それですべてを察したおかみは指で“へやで”と書いて風呂場を出て行く。これを読んだ日、私はあろうことか母の目の前にそのサインを突きつけ、これってなあに?と訊いた。掲載は68年、小学5年生であるからしかたがない。 どういうわけだが、そちら方面のことを大人に質問すると、何か微妙な空気が漂うのか、その時の場面を憶えている。お隣の家で姉妹が購読していると思しき雑誌に載ってる青春小説を読んでいて、おばちゃんにこれなんて読むの?接吻であった。そういえば父にはこれなんて読むの?それは性器であったが、父はデタラメを教えた。子供に噓教えていいのか?いずれにしても私が読んでいたのが、そんな字すら読めない子供が読む類いの物でないことだけは確かだったろう。

※『拝啓つげ義春様』
 (前期)2017年9月30日(土)~10月15日(日)『ゲンセンカン主人』出品予定
 (後期)21017年10月21日(土)~11月5日(日)
ビリケンギャラリー
 住所:〒107-0062 東京都港区南青山5-17-6-101
 TEL:03-3400-2214
 営業時間:12:00 ~19:00(月曜休)
 ホームページ:http://www.billiken-shokai.co.jp/

※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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