明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



塩浜の倉庫から夏目漱石、泉鏡花、永井荷風、三島由紀夫を出して来て撮影を始めてそう日が経っていないから、私にしては新作4点はかなりハイスピードで完成したことになる。しかし今思うとそれ以前の円朝三部作のうち、悩みに悩んだ寄席の前の円朝に寄席から漏れる灯りを当てるべきではなかった。まだ“この世とあの世の狭間”で躊躇していた。川瀬巴水など矛盾を回避するため風景と人物を別々に分けていた。風景の中の人物はあくまで豆粒のように景色の一部として扱い、人物を大きく描く時はいつも室内である。さすがに巴水の時代になると、なんでも有り、というわけにはいかなくなっていて、矛盾を回避する工夫をしない訳にはいかなかったろう。しかしルールブックはあくまで私というわけか、ちょっとずるい気もするが、私は作ることになると馬鹿正直すぎる。巴水が乗り越えていないのだから最近始めた私には到底無理である。まあ圓朝どかして円朝が牡丹灯籠を口演中の看板を掲げる寄席の前を幽霊のお露とお米を歩かせて良かったろう。 今回夏目漱石ではほぼ無地の背景にしたこともあるが、あちらの世界に収まってくれた。さて荷風である。実はこの時、日本的遠近法で火鉢や煙草盆を配するという実験をするつもりでいたのだが、この世のルールから脱することはできなかった。発表2日にしてすでに反省しているようだが、私にはすべて満足できる作品、記念すべき作品である。この連中が礎となり、今後永遠に語り継がれて行くことであろう、(私のブログ内で。)



みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー (出品写真作品)三遊亭圓朝×3/泉鏡花/三島由紀夫/夏目漱石/永井荷風
※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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