明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



日本画では背景を一切描かないという手法がある。そんな背景に普通に陰影のある立体を配すことは、昔の切り貼りの映画ポスターならともかく上手く行かない。そこで夏目漱石で多少のグラデーションくらいは着けるかもしれないが、何もない背景を試そうと考えている。しかし着物に見事な柄のある美人ならともかく、髭を生やして座布団の上で腕組みの男では、殺風景にも程があるだろう。鏑木清方の『樋口一葉』は地味な着物ながら、裁縫の合間にフと小説のことに思いをはせ、という風に裁縫道具やランプが配されている。そこで考えたのが生きてる猫を漱石先生の周囲にはべらせることである。問題は、撮らせてもらおうと思ったご近所の方に訊くと、何匹かいた猫は一匹になってしまい、その猫は空腹の時にかろうじて膝に乗ることがあるくらいで、なかなか難しいだろう、とのこと。微動だにしない漱石に猫が絡むから面白いので、上手く行かなければ13日からの出品は諦め、愛想の良い猫が現れるまで席を空けて待つことにする。漱石のかぎ鼻の件は、真横くらいにしないと良く判らないことが判ったのでその辺はこだわらないことにした。 ところで10月に某漫画家のオマージュ展に写真で参加する予定なのだが、10月と訊いていたが、前期、後期の前期に廻ってしまい、本日、今月30日からだというメールが着た。ファンなら誰でも知っている場面を私なりに再現してみよう、と考えていたのだが、被写体の女性のスケジュールが微妙なのが心配である。夜勤明けなら、というが、それではなんとも申し訳ない。写真の最大の欠点はない物は撮れない、ということである。

※『タウン誌深川』“明日できること今日はせず”連載4回「哀しい背中」
みそろぎ人形展9月13日(水)〜19日(火)丸善丸の内本店4Fギャラリー
※深川江戸資料館にて九代目市川團十郎像を展示中。11月12日まで。

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