明日できること今日はせず
人形作家・写真家 石塚公昭の身辺雑記
 



鉄拐(てっかい)仙人と蝦蟇仙人のコンビは、大昔から絵師にとって魅力的なモチーフだったらしく、ダントツの人気である。我が家にはすでに掛け軸がぶら下がっているが、ヤフオクで手描きの染め付け皿を落札した。40センチもある。そんな物どうするんだ、という話である。 二十歳で岐阜の山中にある磁器の量産工場で線をひいたり釉薬がけをした。この位の皿なら今でも楽勝だろう。何が嫌だったといって氷が張った釉薬に手を突っ込むことで、さすがに工場長がヒーターを入れてくれた。 陶芸作家を目指しながら、好きなことしか出来ない私はこのままではいけない我慢を覚えよう、と殊勝なことを考えたのだが、性能の悪い頭で考えたことは必ず外すことを後に知ることになる。遊びに来た女の子が、これを読め、と澁澤龍彦集成の一巻、エロチシズムを置いていった。確かにそこにはお前に似合わないことしているんじゃない、と書いてあり、一読、陶芸作家の道は雲散霧消となった。 澁澤の眠る鎌倉浄智寺は、臨済宗円覚寺派鎌倉五第4位だが、本を置いていった女の子とは京都南禅寺で豆腐を食べたことを思い出した。本日は皆既月食だそうだが、作品には何かと満月を掲げる私だが、本物には爪の先程にも興味がない。

 



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