夢千代日記

SHIMAちゃんの徒然日記・雑記

「牛の鈴音」(韓国映画)

2009年12月26日 23時00分17秒 | Weblog
 おもしろい!こんなドキュメンタリーを観たことがない。変わらないこと、ゆっくりなことが素晴らしい。価値観がずれてきた今の時代だからこそ、必要なものがあるはずで…。
 韓国では、インディペンデント系である今作がメジャー作品を押しのけて週間興行成績1位を獲得した。興味をそそられる作品。編集には相当の手間がかかっていると思われる。
 田舎の農家。15年という牛の寿命を遙かに越えて、40歳にして今なお役牛として働く牛。その牛と、無農薬、昔ながらの手作業で農業を営むおじいさんの静かでゆっくりな日常を追う。
 79歳のおじいさんと30年に渡って働いてきた牛。牛の命があと一年と知ったおじいさんの牛への愛情がせつない。
 そして、頑固なおじいさんと、一緒に農業を手伝うおばあさんのキャラクターが最高だ。
 無駄なナレーションを排除。この映画では、おばあさんの不満や愚痴が心を揺さぶるナレーションの役目。セリフではないこの言葉が、時に笑わせ、泣かせる。文明の進歩がもたらすものすべてが、人を幸せにするわけではない。ほしいものが簡単に手に入ることの不自由さ。成果主義のバカバカしさ、ゆっくりなことのありがたさを知る。
 牛の命は、おじいさんの命。生きる存在そのもの。゛生命゛のメッセージを感じとれるであろう。積み上げられた薪を見て、あなたも胸を熱くするはずだ。
 自身が農家出身で、役牛がいたというイ・チュンニョルの初長編作品。
(シネマート心斎橋にて)