精神科医師でもある帚木蓬生の同名小説を『愛を乞う人』『エヴェレスト 神々の山嶺』の平山秀幸監督が映画化。
登場人物は細かく説明されていないし、原作とは違ったオリジナルの部分があるが、凝縮した感じのストーリーになっていてわかりやすい。
“それぞれの朝”という副題がついているように、映画なりのラストシーンとなっている。
長野県のある精神科病院。そこには、死刑執行が失敗し、行き永らえてきた秀丸(笑福亭鶴瓶)。幻聴に悩まされるチュウさん(綾野剛)、性的虐待が原因で心を痛め入院してくる由紀(小松菜奈)。入院患者はそれぞれの特徴を抱えながらも、距離感を保ちながら心を通わせる。それを、温かい視点で見守る看護師長(小林聡美)がいた。
だが、そんな日常を壊す衝撃的な事件が起こる。
心が折れながら、壊れそうな現実があっても、それぞれの夜は明けていく。
家族から見捨てられて入院する人は今もいる。精神病院に入っている人への偏見がなくなればいいと思うのは言うまでもない。
映画としての辛い場面はある。だが、愛情があふれ、人間ドラマとして、秀作である。