岩井俊二監督の名作『Love Letter』(1995年公開)。ファンタジーの要素がありつつ、現実的な手紙のやりとりで過去と未来がつながる。「お元気ですかー?わたしは、元気でーす!」と亡き恋人が眠る山に向かって叫ぶ中山美穂のシーンをご存知の方も多いはず。
単観系でありながら、口コミで長い行列ができていたのを思い出す。
そして、今作の『ラストレター』の主演は松たか子。岩井作品として、20年ほど前の『四月物語』以来の主演となる。
岩井監督の繊細で、人に寄り添う優しいタッチは相変わらずで、観るものの気持ちを落ち着かせる。映像の綺麗さもそれにはまる。
『LoVE Letter』の北海道から、今回は岩井監督の故郷である宮城県が舞台となり、監督が体験した出来事を基にした物語となっている。
漫画家の夫(庵野秀明)がいる岸辺野裕里(松たか子)は、姉・美咲の葬儀で美咲の娘・鮎美(広瀬すず)と再会する。
そこで、姉に同窓会の案内が届いていることを知る。そこで、姉の死を伝えようとするが、美咲の同級生たちに姉本人と間違えられ、言いそびれる。しかし、帰りのバスを待つ間に、裕里の初恋の相手で現在は小説家である乙坂鏡史郎(福山雅治)に声をかけられ、連絡先を交換。彼に手紙を送る。
しかし、その内の1通を鮎美に読まれ、裕里、乙坂、鮎美の不思議な三角関係の手紙のやり取りが始まる。
裕里は、高校時代の記憶が蘇ってきて…。
高校時代の裕里を演じるのは、裕里の娘役も演じている今注目の若手・森七菜。美咲の高校時代は広瀬すずが二役を、乙坂は神木隆之介が務める。
さらに、『Love Letter』に出演していた豊川悦司は美咲の元恋人・阿藤を、その同居人サカエを中山美穂が演じ、過去に絡む重要なパートを担う。
『Love Letter』の雰囲気をただよわせる手紙というツールが、懐かしさとともに途中までわくわくさせる。
ただ、今回は中途半端な雰囲気がしていて。
あれから20年以上がたち、当方の感性が錆びついている?一部キャストに好感触がないから?
脚本がそもそも前作を狙い過ぎたから?
惜しいと思ってしまった1作品。
あれがなんでああして、ああなった??😭と消化不良なのは私だけ?
しかし、前作に思い入れがなく、深く追求しなければ、ちょっと背中を押されて、前に進もうと思える作品ではある。観て損はない。
そして、庵野秀明演じる裕里の夫の仕事部屋を見てになる人もいるかと思う。
福山雅治と神木隆之介も安定の先輩後輩である。この作品の福山雅治は、クセがなくていい感じ。