
「これは毎日のお弁当の話さ。それ以上でも、それ以下でもない」
そんな言葉でこの映画は始まる。
バンド「TOKYO No.1 SOUL SET」渡辺俊美のエッセイを実
写映画化した。派手さはないが、日常のわずかな変化が積み上げ
られていく物語。
長年連れ添った妻(映美くらら)との別れ話を決意したミュージ
シャン・鈴木一樹(井ノ原快彦)。15歳の息子・虹輝(なにわ男子
・道枝駿佑)は、一樹と一緒に暮らすことを選ぶが、関係はギクシ
ャクしている。そんな折、虹輝は高校受験に失敗し、1年遅れて高
校進学。“中学時代の後輩たち”と同学年になってしまい、クラスで
は浮いた存在に…。そんな息子に「3年間毎日、お弁当を作る」こ
とを提案し、「3年間、休まず学校へ行く」ことを虹輝も約束する。
だが、一樹の仕事はミュージシャン。不規則な生活を送っているた
め、“朝”の時間は独特だ。徹夜で飲んだ日でも“弁当づくりタイム”
はやってくる。
“そろそろ飽きてくるころだ”と思って期待していなかった虹輝だが、
父は弁当を作り続け、徐々にその楽しさにはまっていく。
そして、虹輝のお弁当に興味を示す仲間がやってきて…。
虹輝が大学に入ってもお弁当を作ってほしいという願いに父は言う。
「大学では好きなものを、好きなところで食べろ」と。「大学とは
そういうところだ」
親の立場を果たしながら、自律を促す。そんな話だと思う。
映画の最後は最初の言葉でしめ括られる。淡々と父と息子の関係が
語られる物語である。お弁当の中身も、お弁当箱も凝っている。
虹輝が父にお弁当の中身をリクエストするという珍しいシーンがあ
るが、その理由が唯一、物語が動くところかもしれない。
出演はほかに、森七菜、若林時英、工藤遥、阿部純子、野間口徹、
KREVA、やついいちろう、坂井真紀など。
『キセキーあの日のソビトー』などの兼重淳が監督をつとめ、原作
者である渡辺が音楽を担当した。
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