すばる舎のイェール大学出版局「リトル・ヒストリー」シリーズの新たな1冊『若い読者のための考古学史』が刊行される。
本書は原稿から編集段階までずっと見てきた。
本日と明日のGetUpEnglishでは本『若い読者のための考古学史』で印象に残ったフレーズを対訳で紹介する。
On her way home, she stopped at the Carchemish excavations in northern Syria, where she found British archaeologists Reginald Campbell Thompson and T.E. Lawrence (later to become famous for his desert exploits in the First World War, which earned him the name Lawrence of Arabia – see Chapter 20). With her usual bluntness, she told them that their excavations were ‘prehistoric’ compared with those of the Germans. Campbell Thompson and Lawrence were not best pleased and tried to impress her with their archaeological expertise. They failed. The Carchemish workers jeered as she left. Years later, she learned that Lawrence had told them she was too plain to marry.
イギリスへ帰る途中、ベルはシリア北部〔トルコ国境〕のカルケミシュの発掘現場に立ち寄り、イギリス人考古学者レジナルド・キャンベル・トンプソン〔1876~1941 〕とT・E・ロレンス〔1888~1935 〕に出会った。このロレンスはのちの第一次世界大戦中に砂漠で大手柄をあげ、「アラビアのロレンス」と呼ばれるようになる人物だ(20章)。ベルは持ち前の率直な物言いで、ふたりの発掘調査はドイツ人たちのやり方にくらべると、まるで「先史時代」だと言い放った。言われたふたりがうれしがるはずもなく、考古学の専門知識を披露して自分たちの株を上げようとした。だが、それも失敗に終わった。発掘作業員たちがヤジを飛ばすなか、ベルはカルケミシュをあとにした。あれほど歯に衣(きぬ)着せぬ女性は結婚には向いていないとロレンスが作業員相手にぼやいたという話が、何年もあとになってベルの耳に届いた。
赤字にしたplainの使い方に注意しよう。この場合は「(人・ことば・態度などが)飾り気のない、率直な」の意味で使われている。
次のような言い方をよくする。
○Practical Example
She speaks in plain words.
「彼女は率直に物を言う」
19世紀あたりから女性の考古学者も出てきた。ガートルード・ベル(1868~1926)がそのひとりだ。ヨークシャーの裕福な鉄工場主の娘だった彼女は、1886年、まだ大学に進学する女性がほとんどいなかった時代にオックスフォード大学に入学した。成績は優秀で、現代史の学位を得て卒業した。それに加えて、旅への情熱と、はっきりものを言うという評判も得ていた。1892年、当時はまだ訪れる人が少なかったペルシャのテヘランを訪問した。以後、精力的に各地を旅してまわり、男性の趣味とされていた登山にも挑戦して、時代を代表する女性登山家のひとりになった。
語学の才能もあったので、アラビア語に磨みがきをかけるために1899年に7か月ほどエルサレムに留学した。そこからシリアのパルミラ神殿や、砂漠の先のペトラまで足を伸ばしたりした。このころから考古学にも興味をもつようになったのである。
本書『若い読者のための考古学史』はとにかく変わり者がたくさん出てきて、彼らの行動を読んでいるだけで楽しめる。そしてもちろん考古学の歴史も知ることができる。
「なぜ考古学が重要なのか。それは考古学が、何百年、何千年という長い時間をかけて人間社会がどのような変化をとげてきたのかを知る唯一の方法だからだ」
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