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『ビジネスデータサイエンスの教科書』訳者あとがき

2020-07-10 23:32:30 | お知らせ

『ビジネスデータサイエンスの教科書』

 訳者あとがき

 ビジネス形態の大きな変化にともない多くの企業がデータを高度に活用する現在、ビジネスタスクを理解し、データ分析が可能なジェネラリスト(=ビジネスデータサイエンティスト)があらゆる状況で求められている。こうした人材の養成が遅れていることもあり、専門の教育を受けていなくてもビジネスデータサイエンティストに必要な技能と知識を学んでいる人たちも増えている。

 だが、データサイエンスの分野は情報が錯綜していることもあり、初心者には理解が難しい。何をどう調べていいかわからないということもあるだろう。

 本書はシカゴ大学のMBA(経営学修士)教育課程から生まれた『ビジネスデータサイエンスの教科書』(Matt Taddy, Business Data Science: Combining Machine Learning and Economics to Optimize, Automate, and Accelerate Business Decisions, 2019)であり、そんな人たちのための待望の1冊と言えるだろう。

 

 著者は学術界、実業界(マイクロソフト、イーベイ、アマゾンなど)での経験を通じて「専門家でなくともかなり有能なデータサイエンティストになれる」と考えており、そのために必要な情報をすべて注ぎ込んでいる。統計学、経済学、機械学習のツール、重要な原則、ベストプラクティスといったことが適切に提示され、専門外の人でもデータサイエンスティストに必要なことを効果的に学べるだろう。

 著者は本書の「イントロダクション」で、ビジネスにおいてデータサイエンスを用いるとどのような意思決定が期待できるか、具体例を示しながら論を進める。最近 10 年間のデータ分析革命の原動力となった機械学習およびビッグデータについても、統計学と合わさることでデータサイエンスという新しい分野が誕生した経緯を明かしながら、本書の議論の範囲を明確にする。本書を通して使用されている高水準なスクリプト言語「R」とその利用環境も、ここで簡単に紹介される。

 以降の10 章で、著者はデータサイエンスで扱うデータ分析の最新手法と関連技術を順次取り上げる。各章において、まず「取り上げるトピックの背景や重要性」をまとめた上で、「具体的な分析手法、技術」を論じることになる。データ分析の手法や関連技術の統計学的・数学的根拠の解説、具体的事例でのR のコードスクリプト、出力結果(表やグラフなど)とその見方、考慮点や検討事項、代替案などが詳細かつ具体的に論じられるので、読者は様々なことが学べるはずだ。

 第1章「不確実性」では、データの不確実性とその評価および対処方法という、すべての手法に共通する重要課題について解説する。つづく第2 章「回帰」で、教師あり(予測型)の代表的分析手法である各種の回帰分析について述べたあと、第 3 章「正則化」でモデルの不確実性への対応の議論に移る。第4 章「分類」でふたたび分析手法に戻り、予測のための分類に関する各手法が論じられる。

 第5 章「実験」と第6 章「統制変数」では、本書の特徴と言える「因果関係を探求するための実験計画法」と「実験まではできない状況(観察研究)における統制対象の扱い方」についての解説がなされる。第7 章「因子分解」でふたたび分析手法に戻り、「教師なし」(発見型)の手法として、因子分解に関連する代表的方法が提示される。

 ここまではデータサイエンスという言葉が使われるようになる以前から行なわれていた構造化データの分析手法が中心であるが、第8 章「データとしてのテキスト」では非構造化データを扱うテキストマイニングが解説される。つづく第9 章「ノンパラメトリック手法」では、データの分布に関して仮定を設けないこの手法に触れる。最後の第10 章「人工知能」で、データサイエンスにつづく新たな技術革新である人工知能(AI)を技術的観点から解説する。

 本書で取り扱う技術手法は幅広く、時に自身の論文を引用しながら著者自らが創出した手法も紹介する。実例のデータを多用し、理論をあてはめることで、実践における要点も押さえられている。その過程でR のコードを提示し、読者の技能習得を促している。コードについても先端的で、本書に使用されるパッケージには著者自身が最適なものを開発して開発者コミュニティに提供しているものもある。

 以上のことから、さらに研究を進めたい人にも非常に重要な1 冊となるだろう。

 

 マット・タディ氏は、2008 年から2018 年、シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスにおいて計量経済学および統計学の教授を務め、大学のデータサイエンスの教科課程を作り上げた。マイクロソフトの主席研究員やイーベイのリサーチ・フェローといった産業界の役職も歴任し、2018 年にシカゴ大学を離れ、アマゾン・ドット・コムにバイス・プレジデントとして迎えられた。現在はアマゾンにおいて詳細なデータ分析をもとにオンラインリテール戦略をすすめる。

 そんな著者の深く幅広い見識が存分に発揮された本書の翻訳は非常にきびしいものとなった。新しいことも数多く書かれているため、日本語の訳語がまったくない、定着した概念も確認できないというケースに何度もぶつかったが、似た概念に訳語があればそれにあわせるなどして日本語として無理なく読めるように心掛け、読者がさらに調査ができるように英語表記も必要に応じて付記した。 

 翻訳作業においては、訳者のひとり井上毅郎が職場でともにデータサイエンスに取り組む清政貴文氏と梅元裕一氏に一方ならぬお世話になった。清政氏、梅元氏に深く感謝申し上げる。また同じく井上が東京工業大学大学院時代にデータ分析の指導を受けた山口しのぶ教授(現在、国際連合大学サステイナビリティ高等研究所所長を兼務)、髙田潤一教授(現在、東京工業大学副学長を兼務)にも、この場を借りて謝意を表する。

 本書はアマゾン・ドット・コムの本国のサイトのEconometrics & Statistics やMathematical &Statistical Software やBusiness Mathematics などのカテゴリーで(No.1 を含めて)常に上位にランキングされるなど、すでに世界中で広く読まれている。この大変な話題作の訳者に抜擢してくださったすばる舎の徳留慶太郎代表取締役社長と田中智子編集長に深く感謝する。また、きびしい翻訳作業を後押ししてくださり、編集段階に入っても訳文の確認のほか、図版の調整や索引作成など、様々な煩雑な作業をすべてこなしてくださった編集部の稲葉健さんに厚く御礼申し上げる。

 

 日本市場においてもデータサイエンティストの需要は高まっているが、他国に比べると教育課程の整備が遅れていると思われるし、専門外の人々が「自学自習」によってデータサイエンティストになることも強く求められているように思う。そんな人たちに本書を役立てていただけることがあれば、訳者としてとてもうれしい。

 2020 年7 月11 日

 上杉隼人 

 井上毅郎 

 

 ビジネスデータサイエンスの教科書

 マット・タディ (著), 上杉 隼人 (翻訳), 井上 毅郎 (翻訳)

 http://www.subarusya.jp/book/b512335.html

 https://www.amazon.co.jp/dp/4799109154

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ビジネスデータサイエンスの教科書

2020-07-10 22:38:16 | お知らせ

ビジネスデータサイエンスの教科書
マット・タディ (著), 上杉 隼人 (翻訳), 井上 毅郎 (翻訳)
http://www.subarusya.jp/book/b512335.html
https://www.amazon.co.jp/dp/4799109154

ビジネス形態の大きな変化にともない多くの企業がデータを高度に活用する現在、ビジネスタスクを理解し、データ分析が可能なジェネラリスト(=ビジネスデータサイエンティスト)があらゆる状況で求められている。こうした人材の養成が遅れていることもあり、専門の教育を受けていなくてもビジネスデータサイエンティストに必要な技能と知識を学んでいる人たちも増えている。
本書はシカゴ大学のMBA(経営学修士)教育課程から生まれた『ビジネスデータサイエンスの教科書』であり、そんな人たちのための待望の1冊と言えるだろう。
著者は学術界、実業界(マイクロソフト、イーベイ、アマゾンなど)での経験を通じて「専門家でなくともかなり有能なデータサイエンティストになれる」と考えており、そのために必要な情報をすべて注ぎ込んでいる。統計学、経済学、機械学習のツール、重要な原則、ベストプラクティスといったことが適切に提示され、専門外の人でもデータサイエンスティストに必要なことを効果的に学べるだろう。
本書で取り扱う技術手法は幅広く、時に自身の論文を引用しながら著者自らが創出した手法も紹介する。実例のデータを多用し、理論をあてはめることで、実践における要点も押さえられている。その過程でRのコードを提示し、読者の技能習得を促している。コードについても先端的で、本書に使用されるパッケージには著者自身が最適なものを開発して開発者コミュニティに提供しているものもある。以上のことから、さらに研究を進めたい人にも非常に重要な1冊となるだろう。
マット・タディ氏は、2008年から2018年、シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスにおいて計量経済学および統計学の教授を務め、大学のデータサイエンスの教科課程を作り上げた。マイクロソフトの主席研究員やイーベイのリサーチ・フェローといった産業界の役職も歴任し、2018年にシカゴ大学を離れ、アマゾン・ドット・コムにバイスプレジデントとして迎えられた。現在はアマゾンにおいて詳細なデータ分析をもとにオンラインリテール戦略をすすめる。
日本市場においてもデータサイエンティストの需要は高まっている。専門外の人々が「自学自習」によってデータサイエンティストになることも強く求められているように思う。そんな人たちに本書を役立てていただけることがあれば、訳者としてとてもうれしい。
(「訳者あとがき」より抜粋)

著者 マット・タディ(Matt Taddy)
ビジネスデータサイエンティスト。2008年から2018年、シカゴ大学ブース・スクール・オブ・ビジネスにおいて計量経済学および統計学の教授を務め、大学のデータサイエンスの教科課程を作り上げた。マイクロソフトの主席研究員やイーベイのリサーチ・フェローといった産業界の役職も歴任している。2018年にシカゴ大学を離れ、アマゾン・ドット・コムにバイス・プレジデントとして迎えられた。現在、同社において詳細なデータ分析をもとにオンラインリテール戦略をすすめる。

訳者 上杉隼人(うえすぎ・はやと)
翻訳者(英日、日英)、編集者、英語・翻訳講師。早稲田大学教育学部英語英文学科卒業、同専攻科(現在の大学院の前身)修了。訳書に『若い読者のための宗教史』『若い読者のためのアメリカ史』『21匹のネコがさっくり教えるアート史』(すばる舎)、『スター・ウォーズ』[全作、I~IX]『アベンジャーズ エンドゲーム』(講談社)、『ザ・ギャンブラー ハリウッドとラスベガスを作った伝説の大富豪』(ダイヤモンド社)ほか多数(60 冊以上)。

訳者 井上毅郎(いのうえ・たけろう)
1990年京都府生まれ。2013年に東京工業大学工学部情報工学科を卒業、2016年同大学院理工学研究科修士課程を修了。専攻は国際開発工学。現在は自然言語処理に特化したデータ解析企業FRONTEOにデータサイエンティストとして勤務。訳書に『ナショナル ジオグラフィック にわかには信じがたい本当にあったこと』(共訳、日経ナショナル ジオグラフィック社、2019年)。

単行本: 312ページ
出版社: すばる舎 (2020/7/22)
言語: 日本語
ISBN-10: 4799109154
ISBN-13: 978-4799109151
発売日: 2020/7/22

目次
はじめに
イントロダクション
第1章 不確実性
第2章 回帰
第3章 正則化
第4章 分類
第5章 実験
第6章 統制変数
第7章 因子分解
第8章 データとしてのテキスト
第9章 ノンパラメトリック手法
第10章 人工知能
参考文献
訳者あとがき
さくいん

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WHEEL AND DEAL

2020-07-10 06:03:20 | W

 wheel and dealは「(商売や政治で)思いのままに事を運ぶ、敏腕[辣腕]をふるう」の意味で使われる。

 今日GetUpEnglishはこの表現を学習する。

○Practical Example

 They are wheeling and dealing behind the scenes to get the bill passed.

「彼らは法案を通させるために舞台裏であれこれ策略をめぐらせている」

●Extra Point

  この本に、次の表現がある。

 The Marvel Studios Story: How a Failing Comic Book Publisher Became a Hollywood Superhero (The Business Storybook Series)  by Charlie Wetzel (Author), Stephanie Wetzel (Author)

 https://www.amazon.com/dp/1400216133

◎Extra Example

  Perelman and his team of executives continued to wheel and deal using Marvel as their tool.

「ペレルマンと彼のチームはマーベルを道具として思うがままに利用しつづけた」

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