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トヨタの09年発売のハイブリッド車、新型プリウスの一時的なブレーキ不具合の苦情がアメリカで100件以上、2月4日付「時事ドットコム」記事によると、日本で〈国土交通省が把握しているだけで77件だが、トヨタは「もっと大きな数字」としてい〉としている。
また同じ2月4日付「47NEWS」記事は、〈国土交通省は4日、プリウスのブレーキ問題で寄せられた苦情件数が46件増えて60件になったことを明らかにした。物損事故の報告も4件あった。〉と伝えている。
物損事故の種類は追突事故が含まれている。
だがトヨタはこの不具合を車両欠陥ではないと発表した。日本がその技術を世界的に誇る世界有数の企業、トヨタ自動車なのだから、車両欠陥でないことは当然の事実と受け止めるべきで、誇らしく思って当たり前、その車両技術への信頼を揺らがせてはならない。
トヨタ自動車の品質保証担当の横山裕行常務が2月4日の記者会見で、そのことを明らかにした。
《“感覚の問題 欠陥ではない”》(NHK/10年2月4日 18時33分)
「ブレーキのシステムの設定によって、ブレーキが一瞬利かない時間が発生し、運転手が違和感を感じているという問題だ」
記事はこの説明を〈ブレーキが利かなくなるというのは感覚的なもので、車両の欠陥ではないという認識〉を示したものと解説している。
要するに車両欠陥ではないから、ブレーキが一瞬利かなくなった、あれ、おかしいぞと「違和感を感じ」るだけのことで済む問題だと説明したのである。
だた、「違和感」の問題に過ぎないブレーキの不具合であるにも関わらず、トヨタはプリウス問題が明るみに出る以前の先月からシステムの設定を変更するなどの対策を取っていたと記事が伝えている。いわゆるこの“ひそかな”対策について横山常務はつぎのように答えている。
「日々の品質改善のなかで対応したもので、問題を隠していたわけではない」
記事はこの発言を〈公表する必要はなかったという考えを強調〉したものだと解説している。ブレーキの不具合が個人的な「違和感」の問題に過ぎないのだから、「違和感」に対応した“システムの設定等の変更対策”ではなく、「日々の品質改善のなかで対応した」対策だとするのは当然の説明である。
記事は〈去年7月、千葉県松戸市で「プリウス」が関連してけが人が出た事故〉を取り上げているが、この事故に関しても、「ブレーキのシステムの設定によって、ブレーキが一瞬利かない時間が発生し、運転手が違和感を感じているという問題だ」とする、いわゆる“トヨタ公式見解”に添って横山常務は次のように答えている。
「路面の状況やデータ類からみて、車両側に異常はないと判断し、所轄の警察署に報告している」
一旦打ち出した「ブレーキのシステムの設定によって、ブレーキが一瞬利かない時間が発生し、運転手が違和感を感じているという問題だ」とする“トヨタ公式見解”と異なる説明であったなら、矛盾を来たす。あくまでも“トヨタ公式見解”で統一した説明を果たさなければならない。
“トヨタ公式見解”の以上を纏めると、プリウスのブレーキが一瞬利かなくなる問題も、追突事故、その他軽微な事故で済んでいる怪我人が出ている事故も、個人的な「違和感」から起きている問題だと言うことになる。
例え軽微な被害で済んでいたとしても、事故を起こした運転者にしたら、ブレーキが一瞬利かなくなった事実を無いこととされて、運転者の「違和感」が招いた事故だとされたなら、納得はいかないだろう。このことは事故を起こされた車の運転者にしても同じはずだ。「違和感から事故を起こしてしまいました」と言われたなら、「ナ、ナヌ・・・」となるに違いない。
だが、世界のトヨタを擁護するためにも、“トヨタ公式見解”を破綻させないためにも、あくまでも車両欠陥ではなく、「違和感」が引き起こした事故としなければならない。
2月4日の横山常務の記者会見に関して、「Response」記事が自動車産業関連などのニュースを専門に取り扱っているだけあってより詳しく伝え、ブレーキ不具合に対する対処方法を解説している。
《トヨタ プリウス、ブレーキに“空走感”を感じたら》(2010年2月5日(金) 17時43分)
先ず最初に次のように記事は書いている。
〈トヨタ自動車は、新型『プリウス』が、ある条件のもとでブレーキを操作した場合、ユーザーに空走感を抱かせる現象があることを4日、明らかにした。この現象が、安全に関わる問題なのか、それとも佐々木副社長がいう“フィーリング”なのかは、同社と国土交通省で調査中だが、もし新型プリウスユーザーがこうした状況に遭遇した場合は調査中ではすまない。どうすればよいのか。〉――
そして「空走感」発生の条件として、〈例えば、路面が濡れたり、凍結したりして片輪だけ回転数が変わるような場合に、ABS(アンチロックブレーキシステム)が作動した時だ。この瞬間、プリウスでは、回生ブレーキが油圧ブレーキに切り替わる。〉と解説している。
「NHK」記事の「違和感」がここでは「空走感」となっているが、これも個人的な感覚の問題となる。だが、ブレーキの不具合が「ある条件のもとでブレーキを操作した場合」発生するなら、ハイブリッ車プリウスに限ってのことだから、「ある条件」に遭遇する可能性は個人の問題ではなく、プリウスを運転する者すべての問題――いわばプリウスの問題となって、“トヨタ公式見解”を破綻させるばかりではなく、「世界のトヨタ」という名誉・信頼をも破綻させてまずいことになる。
この記事でも品質保証担当の横山裕行常務役員が登場する。登場してブレーキの空走感について説明している。
「一定の踏力で軽いブレーキングを続けた場合、路面の状況によっては、ブレーキの反応がわずかに遅れるという現象で、・・・雪道などでガガガッと車輪が動く経験などでご存知だと思いますが、ABSは車輪のロックを防止するために、ブレーキを一時的に緩めるという機能を持っている。この時(新型プリウスは)回生ブレーキを油圧ブレーキに切り換わった時に時間差が生じる。そこでいろいろなお客様からご指摘をいただいているのが”空走感”。短時間ブレーキが利かなくなることがある」
――
「雪道などでガガガッと車輪が動く」といった等々の「路面の状況によっては」を条件としたブレーキの不具合なら、そうっいた「路面の状況」に遭遇する可能性にしてもやはり個人が決める問題ではなく、プリウス自体が決定する「ブレーキの反応がわずかに遅れるという現象」と言うことになって、「NHK」記事が伝えていたことと矛盾するだけではなく、“トヨタ公式見解”にも違反し、世界のトヨタの名を危うくしかねない問題発言となる。
記事はここで「回生ブレーキ」について解説を加えている。
〈ハイブリッド車や電気自動車(HV/EV)特有の装置で、加速に用いる電気モーターを逆回転させることで減速させると同時に、発電をする仕組みだ。ガソリン車でいうエンジンブレーキとほぼ同じで、下り坂や、ごく緩いブレーキングのときに作動するものだ。ところが、そうした緩やかなブレーキングでわずかにスピードを制御している場合に、先のような条件でABSが作動すると、その車輪制御のためにメリハリのある大きな力を必要とするため油圧ブレーキに切り換えなければならない。このわずかな切替時間が空走感につながるというものだ。
しかし、ユーザーにとっては、いくら瞬間のことであっても、予測がはずれてスピードが落ちなければ運転中のパニックにつながる。誰もがこのくらいのブレーキングであればこのぐらいスピードが落ちるという予測のもとに運転しているからだ。〉――
だが、横山常務は一旦破綻させかけた“トヨタ公式見解”を土壇場で踏みとどまって建て直し、プリウスの車両欠陥ではなく、あくまでも運転者の運転操作の問題でだとして、世界のトヨタの信頼性を守り抜く。
横山常務は「空走感」が発生した場合の的確な対処方法として、「踏み増す」という行為を挙げたと記事は書いている。
〈運転中に空走感を感じるということが起きても、ブレーキペダルをより多く踏み込めば、その踏力に比例してより大きな減速を見込むことができる。〉と。
注文した料理を食べつくしても、なお空腹感を感じたなら、さらに料理を注文して、その料理を腹に詰め込めば満腹感を得ることができると説明しているようなものだが、空腹感は注文をし直して、その料理をさらに腹に詰め込むまで待ってくれるが、「空走感」はブレーキを「踏み増す」まで必要な停止まで待ってくれない危険性を常に付き纏わすことを考慮に入れなければならない。
いや、横山常務は考慮に入れなかったからこそ、上記説明で車両欠陥ではなく、運転者の問題だとする修正に見事成功することができた。さすがは世界のトヨタである。その技術にますます信頼を寄せることになるだろう。
記事は横山常務の運転者の問題だとする修正にも解説を加えている。
〈当然と言えば当然なのだが、新型プリウスの空走感は、ブレーキそのものが利かないという現象ではなく、切替のタイミングの問題だ。だからこそ横山氏は「踏めばきちっと止まります。そういう意味で制動停止距離は伸びるということはありません」と、30分ほどの説明の中で、幾度も繰り返した。〉――
記事はここで終えているから、プリウスのブレーキの不具合は車両欠陥ではなく、運転者の問題とする“トヨタ公式見解”を擁護し、そのことによって世界のトヨタを擁護する内容だと分かる。同じ日本人として当然の対処方法であろう。
横山常務の言っていることを一言で言い直すと、車が悪いんじゃない、ブレーキの踏み方悪いのだとなるが、踏み方の良し悪しはすべての「路面」を発生条件とするのではなく、「ある条件のもと」にある「路面」のみを発生条件とするなら、どう考えてもブレーキの踏み方が悪いといった個人的な運転操作の技術に起因する問題ではなく、やはり車両自体の欠陥に帰すべきブレーキの不具合となるが、このように見てしまうと、横山常務の説明は自己企業保身のこじつけ、牽強付会の類と堕し、世界のトヨタ擁護につながらない邪道な解釈となってしまう。