――民主党に衆・参両院過半数のチャンスを与えよう――
平野官房長官が09年12月28日午前に記者会見を開いて沖縄基地問題検討委員会の設置を報告している。
「私の方から一点ございます。沖縄基地問題検討委員会の設置でございます。沖縄基地問題に関しましては、本日、基本政策閣僚委員会の下に沖縄基地問題検討委員会を設置し、13時30分より第1回目の会合を開催をいたすことにいたしました。同委員会の委員長としては私が務めます。委員長代行には松野官房副長官、委員としては外務・武正副大臣、防衛・榛葉副大臣、社民党からは阿部知子衆議院議員、服部良一衆議院議員、国民新党からは下地衆議院議員がメンバーとして参加をいたします。事務局は内閣官房が務めることといたしました」(首相官邸HPより)
このことばかりは起きているときでも眠っているように見える平野官房長官が満足に委員長として意見集約の指導力を発揮し得えていなかったからだというわけではないだろう。委員会発足2カ月になんなんとするのに具体的な移転先さえ決まらないのは国民新党が沖縄県内移転となる現行案と似たりよったりの案に対して社民党はあくまでも国外移転に一歩も退かない姿勢に拘っているため、妥協点を見い出すことが困難な袋小路に立ち至っているからだろう。
それに主導的立場にいる民主党が未だ候補地を挙げていない。5月末までにはまだ3カ月あると言えば、あると言える。但し、時間的余裕が決定の余裕とは限らない。「NHK」記事――《国民新党の陸上案説明に異論》(10年2月18日 5時3分)によると、国民新党が掲げた嘉手納基地への統合案+名護市のキャンプシュワブ陸上に海兵隊の部隊を移設し、新たにヘリコプター使用可能な滑走路を建設する「キャンプシュワブ陸上案」は同党下地政務調査会長が、「将来的には、県外や国外移設を目指しており、今回の案は、あくまで10年くらいをメドにした暫定的な案だ」としつつその説明を行った17日夜の会合に出席していた沖縄県に関係する民主党、社民党、無所属の国会議員、名護市の稲嶺市長から、「沖縄県民の負担軽減につながらず、とうてい納得できない」とか、「さきの名護市長選挙での稲嶺市長の勝利は、名護に新たな基地を作らせないという世論だ」などといった反対意見が相次ぎ、賛同する意見はなかったと伝えている。
そもそもからして普天間基地の名護市への移設に反対を掲げて今回当選した名護市の稲嶺市長が17日夜の下地議員等の会合に先立って同じ17日に亀井静香と会談、既に国民新党の「キャンプシュワブ陸上案」に反対の意思表示を示している。
「わたしは先月の市長選挙で、海にも陸上にも新しい基地はつくらせないと約束して当選した。名護市民や沖縄県民の声をくんでほしい」(《名護市長“陸上案容認せず”》NHK/10年2月17日 15時8分)
対して亀井静香は次のように述べている。
「沖縄県民の気持ちを生かして解決策を探るのが基本的な立場だ。ただ、ベストがダメなら、次善の策として稲嶺市長が理解してくれるかどうかだ」
どこにも決まらなかったなら、そこしかないじゃないかと、名護の「キャンプシュワブ陸上」を前以ての予定調和としている発言とも取れる。
稲嶺名護市長は翌18日午前に鳩山首相とも会談している。(《鳩山首相 名護市長と初の会談》NHK/10年2月18日 12時30分)
稲嶺市長「さきの市長選挙では、海上、陸上にかかわらず『名護市に新しい基地は造らない』ということを訴えて当選した。民意の負託を受けており、市民が納得できる答えを出してほしい。県外か国外への移設をお願いしたい」
鳩山首相「市長選挙の結果は、1つの民意として重く受け止めている。しっかりと沖縄の民意を受け止め、県民の負担軽減のため、鋭意検討委員会で検討しているところだ」
稲嶺市長(会談後の記者会見で)「私は名護市民に対して『陸上も含めて基地は造らせない』と言ってきた。鳩山総理大臣には、市長選挙の結果を民意としてしっかりくみ取っていただきたい」
記事は稲嶺市長が民主党の小沢幹事長とも会談し、国民新党案は受け入れられないと伝えたのに対して、小沢幹事長は「選挙で勝利したのはよかった」と述べたと伝えている。
何だか禅問答のような気がするが、県内移設反対の民意を打ち立てることができて「よかった」という意味なのか、特に自民党議員を代表として政治家は口と腹とが違うことが間々あるから、何とも判断しようがない。
社民党が掲げるグアム移転案にしても、17日に米太平洋海兵隊(司令部・ハワイ州)のスタルダー司令官(中将)が東京都内で講演し、〈沖縄駐留の海兵隊について「ヘリコプター部隊は地上部隊の近くに置く必要がある」〉、また、社民党の〈すべての海兵隊員を米領グアムに移す案について「グアムは沖縄の代替地ではない」と語り〉、米軍普天間飛行場の県外移設に否定的な見解だったという。(《普天間移設:「グアム、代替地でない」米海兵隊司令官》毎日jp/2010年2月17日 21時03分)
この司令官は日本に駐留する海兵隊を指揮下に置いていると言うことだから、指揮官の立場からの戦略的な指揮作戦上の必要性に則った発言として無視し難いものがあるということなのだろうが、社民党が国外移転先としているグアムの知事自体が困難視していると政府・与党の沖縄基地問題検討委員会の視察で訪れた松野頼久官房副長官や社民党の阿部知子議員、国民新党の下地議員らに対して既に2月12日の時点で伝えている。(《グアム知事、普天間飛行場移設困難視》「沖縄新報」//2010年2月12日 10時05分)が伝えている。
「住民の半数は移転計画を支持するが、計画を超える数字は受け入れがたい。経済的な問題もあり、土地にも限界がある」
これはインフラ整備の対応の難しさを訴えた発言だそうだ。
グアム知事の一連の発言に対して社民党の阿部議員と国民新党の下地議員は正反対の対応を示している。
阿部議員「インフラ整備に注意を払えば、計画以上の受け入れはあり得るのではないか」
つまり、これからの交渉次第、交渉の中身次第だとグアム移転への期待を失わなかったわけである。日本が移転費用をすべて賄えば可能かもしれないが、そこまでカネを使わなければならないのかと反米感情が勃発しない保証はないし、日本の財政の問題も生じる。
下地議員「知事の話やグアム議会の話を聞く限り、計画以上の数を移転するのは不可能ということがはっきりしたのではないか」
ところが社民党の期待に反して、《海兵隊グアム移転、期間延長を=「普天間」に影響も-地元下院議員》(時事ドットコム/2010/02/17-17:08)が題名どおりの内容を伝えていて、社民党の期待に冷水(れいすい)を浴びせている。
米領グアム選出のボルダーロ下院議員(民主)が2月16日に地元の議会で演説し、在沖縄海兵隊のグアム移転について2014年の完了期限の延期を求める考えを表明し、そのことを同議員のホームページ上で明らかにしたという。
〈ボルダーロ氏は、移転に伴うインフラ整備には8~10年かかるとし、現実的な期限を再設定すべきだと主張。14年の期限を「誰も支持しない」と批判、関連法案に反対の意向を示した。
現行の在日米軍再編計画はグアム移転について、沖縄県の普天間飛行場移設とのパッケージと明記。普天間代替施設の完成も14年を目標としている。〉――
記事はグアム知事も期限延期を求めていると伝えている。
ますます狭まる社民党のグアム移転への期待だが、こういった閉塞的な状況を受けてのことなのか、最初に挙げた沖縄基地問題検討委員会の第7回会合が2月17日に首相官邸で開かれものの、社民、国民新両党の移設候補地案の提示は延期され、各委員から11日に実施したグアム視察内容が報告されただけで終了したと、2月18日付「琉球新報」記事――《普天間移設候補地 提示は延期、時期未定》が報道している。
しかも次回開催日は未定で、正式な提示時期などは平野氏に一任されたと、決着の不透明さを暗示している。
阿部知子議員「一刻も早く実施しなければいけないのが普天間飛行場の負担軽減、危険の除去。その一方で(グアムなど)移転先の整備というものは(時間を要するため)二つの間に時間のずれがある。その間を埋めるものが必要だと考えている」
記事はこの発言を、〈暫定的な移設先として沖縄以外の国内移設を検討する考えを重ねて示した。〉ものだとしているが、社民党は国外移設先候補としてグアム以外に北マリアナ諸島のサイパン島やテニアン島も挙げ、現地からは歓迎の意を得ているが、北澤防衛大臣が既に2月12日の閣議後の記者会見で難色を示している。《防衛相 サイパンへの移設困難》(NHK/10年2月12日 11時42分)
「アメリカ軍がどう考えるかだが、サイパン島などにまで、すべての部隊が後方に移動することになったら、ほんとうに抑止力が維持できるのかという議論がどうしても出てくる。・・・・この問題を5月中に解決するという、鳩山総理大臣の強い意向があるなかで、その議論が長引けば、5月までに決めるのはなかなか難しい」――
米軍首脳もアメリカ政府首脳も現行案を最善とし、社民党が期待している国外移設のグアムは現地知事も下院議員も反対、国民新党の嘉手納基地統合を含めた「キャンプシュワブ陸上案」は地元の名護市長が猛反対、沖縄県知事は国民新党案を、「一体どこをどうすれば、できるのか。まだ、政府から聞いていない」(《普天間移設:知事困惑「聞いていない」 シュワブ陸上案》(琉球新報/2010年2月16日)と拒絶反応。
仲里全輝副知事「名護市長や周辺住民が猛反対し、地域の理解は得られない。従来案に比べると生活環境への影響が大きい。・・・・(民主党は)衆院選で県外と言って県民をあおり立てて期待させておいて、なぜ県外ができないのか。他府県が反対してできないのなら、沖縄県民も反対だ。・・・・県民の総体は県内移設に反対だ。県政の立場では、県外移設に具体的なめど付けを強く期待したい」(同琉球新報)
ケンモホロホロ。県外移設先として打診されている九州の各自治体の首長も反対。連立政権側も最大公約数的に納得させる移設先を未だ提案できないでいる。アメリカ政府首脳も極東関係の米軍首脳も現行案を最善としている八方塞がりの状況にあり、早くも5月決着危ぶむ声が出始めている。
民主党と国民新党は5月決着未確定を以って、アメリカ側が最善としている現行案に国民新党が提案している「キャンプシュワブ陸上案」をプラスさせる形で終着点と予定しているのかもしれない。
田村耕太郎参院議員が自民党を離党して民主党に入党、国民新党を加えて社民党抜きでも法案可決可能な過半数を維持するに至っている。
だが問題は、地元名護市長の猛反対と仲里全輝沖縄副知事が代弁している、「(民主党は)衆院選で県外と言って県民をあおり立てて期待させておいて、なぜ県外ができないのか。他府県が反対してできないのなら、沖縄県民も反対だ」を如何にクリアするかだが、沖縄県民の意向を汲むとして現行案に反対、回り道を取ってほぼ元の場所に戻ったということなら、その時間の無駄と無策が非難されて7月の参議院選挙を間近に控えて支持率を尚のこと下げることになるに違いない。
アメリカ側からも非難を受けるはずだ。鳩山首相がオバマ大統領に会談で言ったとする、「私を信頼してもらいたい」とは大騒ぎした末にこのことかと。
こういったデメリットと恥を曝す覚悟で堂々巡りの末にキャンプシュワブ沖からキャンプシュワブ陸上の違いしかない場所に立つとしたら、その勇気と厚顔は称賛に値する。
普天間基地の県外・国外移設が実現不可能ということなら、同じ実現不可能な提案かもしれないが、県外・国外移設の提案同様、提案だけは許されるはずだ。
題名で断ったように「夢見たいな話」である。逆転の発想で普天間がある宜野湾市の基地周辺の住民を別の場所に大量に移転させるか、名護市の移転予定地のキャンプシュワブ周辺の住民を大量移転させるか、その上で移住して無人となった場所に飛行ルートを限定して、そうするとことで基地周辺に住居を構えることによる危険除去を図る方法である。
現状の生活拠点からの移転は既にダム建設等で行っている。移転住民の数に大きな違いが生じるが、沖縄振興と併行させた移住ならどうだろうか。
但し、住民や自治体の許可を取らなければならないのは断るまでもない。中国で三峡ダム建設のために住民を100万人以上も強制的に移住させたが、共産党一党独裁だからできることで、日本は独裁国家ではない。住民の意思が優先されなければならない。
移転地に工場建設用地取得費及建設費を低利で融資、税制上の優遇措置を最大限講じて法人税を年数を限ってゼロとするなどの恩恵を与えて従業員1000人~2000人規模の大きな工場を誘致する。
工場建設が実現したら、その周囲に生活圏や商業圏が付帯し、人口は工場従業員の1000~2000人以上の需要を見込むことになる。
建設地は海岸に近い場所に建設、港湾を設ければ、輸送に関わるインフラが整備可能となる。
あるいは関西圏や九州、四国からは勿論、台湾や韓国、タイ、ベトナム、カンボジア等のアジアからの観光客を対象に同じ税制上の優遇措置、その他の有利な条件でディズニーランドを建てるといった手もある。
現在、ディズニーランドはアメリカに2カ所、日本に1カ所、フランスのパリに1カ所、そしてアメリカにクルーザーに仕立てたディズニーランドの4箇所しかないということだが、沖縄に建設した場合、需要が見込めないだろうか。
沖縄振興を何によって図ろうとも、移転住民の現況以上の生活の発展、維持の保障を絶対条件としなければならないのは断るまでもなくい。